安倍首相が熊本城を第一声の場に選んだ理由 「第一声」から読み解く主要政党の選挙戦略

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午前は熊本、そして15時からは福島県郡山市のJR郡山駅前で街頭演説(写真:つのだよしお/アフロ)を行った。安倍首相はこれまでどおり、被災地での第一声にこだわった

6月22日、第24回参議院選挙が公示され、7月10日の投開票日へ向けて18日間の選挙戦が始まった。選挙では、政党の代表がどこで第一声を発するのかが重要であり、かつ興味深い。それぞれの第一声の場所から各党のスタンスを読み取ってみよう。

安倍晋三首相は9年前の惨劇を今でも忘れてはいないだろう。2007年7月29日に行われた参院選だ。この時に自民党は27議席も減らし、第1次安倍政権が内閣総辞職に追い込まれる一因ともなった。

なぜ熊本城内の加藤神社を選んだのか

引導を渡したのは民主党代表だった小沢一郎氏だ。その小沢氏が第一声の地として選んだのは鳥取県八頭町。かつてともに自民党を離れ、新進党を結成した石破茂氏の地元だ。そこに小沢氏が民主党公認候補として擁立したのは、かつて相沢英之元経企庁長官の秘書を務め、自身も自民党の衆院議員だった川上義博氏である。

まさに因縁に因縁を絡ませた参院選だったともいえるが、勝利を得たのは公示日の12日に八頭町役場前で約500人を集め、ビール箱の上に立って演説した小沢氏だ。これに対して自民党は麻生太郎氏や石破氏を鳥取に投入して対抗したが、小沢氏の勢いに及ばなかった。

今回、安倍首相は4月の震災で大きく破壊された熊本城内の加藤神社を第一声の場に選んだ。安倍首相が被災地を選んだのは今回が初めてではない。2013年の参院選と2014年の衆院選でも、第一声の場として被災地・福島を選んでいる。

訴えたのは専らアベノミクスで、弁舌はさわやか。被災地に寄り添う姿勢を強調すると同時に、スムーズな復興には安定的な政権が必要であることをアピールする意味もあっただろう。加藤神社が祀るのは豊臣秀吉に仕えた加藤清正だが、土木事業に勤しみ農地を整備し、“名君”として領民に慕われた。この清正公のイメージを自らに重ねたいという思惑もあったのではないか。

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