時給300円!刑務所は究極の低コスト工場だ 刑務所は仕事不足に悩んでいる

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「時給(=刑務所に支払う作業時間1時間当たりのコスト)は300円程度ですな。以前より上がったけれど、それでも市価の3分の1程度だと思います」。驚きました。安いと言っても、国が決めているのですから適正価格です。これなら低廉な労働力を求めて、中国、東南アジアに行かなくて済みます。

事実、安い数珠が海外から入ってきて、普通の数珠屋さんは立ち行かなくなりました。現在国内で生産しているのは、山田念珠堂さんぐらいだそうです。国内産業の空洞化対策にも刑務作業は一役買っているのです。考えてみると、工場の光熱水費もいりません。究極のコスト削減工場です。

刑務所の技官が作業ノウハウをマスター

山田社長はさらに興味深いお話を聞かせてくれました。「製造開始に当たっては、刑務所の技官さんが弊社にお見えになります。それで作業工程を1週間から10日程勉強され、習熟して刑務所に戻られます。うちの機械を貸し出し、その技官さんの指導で受刑者の方々が数珠を造られるのです。数珠作りは他の刑務作業(洗濯など)より作業コストは高いと思いますよ」。

現在は、和歌山刑務所と奈良少年刑務所で製造しています。これにも理由があり、作った数珠は、和歌山なら高野山、奈良なら数多い近在の寺社に販売に行くそうです。刑務作業で作った数珠と聞くと快く引き受けてくれ、参拝の記念品として並べてくれます。刑務所では在庫をあまり持てないので、作ったら売り切ることを求められますが、その意味でも最適な立地なのです。

もちろん、制限もあります。全国で1業種1社に限定です。一過性でなく、継続的な仕事でなければいけません。作業を委託しても、好況時は待たされることもあります。山田念珠堂さんも最初は年単位で待たされたそうです。景気の状況で、仕事探しも左右されるのです。

一方で思わぬ余禄もあります。割と長く同じ作業に従事されることが多いので、受刑者がベテラン社員並みになり、種々改善提案をしてくれることもあるとか。もはや廃盤になった機械のことにも詳しく、いろいろ助けてもらっているそうです。

技術指導員の下、品質の高い仕事をやってくれます。規律正しく職場環境も良好です。中国、東南アジアと世界に向かうだけでなく、会社の近くにある刑務所も身近な生産現場としてとらえるべきだと思いました。

低廉な上に社会貢献にもなる作業委託を、社長さん、もっと活用されてはいかがでしょうか。

竹原 信夫 日本一明るい経済新聞 編集長

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たけはら のぶお / Nobuo Takehara

有限会社産業情報化新聞社代表取締役(日本一明るい経済新聞編集長)。1971年3月、関西大学社会学部マスコミ学科卒、同年4月にフジサンケイグループの日本工業新聞社に入社。その後、大阪で中小企業担当、浜松支局記者などを経て、大阪で繊維、鉄鋼、化学、財界、金融などを担当。1990年4月大阪経済部次長(デスク)、1997年2月から2000年10月末まで大阪経済部長。2001年1月に独立、産業情報化新聞社代表に。年間約500人の中小企業経営者に取材、月刊紙・日本一明るい経済新聞を発行している。
 

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