発送電分離より、小売り全面自由化を進めよ

論争!発送電分離

――澤 昭裕・21世紀政策研究所 研究主幹に聞く

 「発送電一貫」「地域独占」「総括原価方式」で特徴づけられる日本の電力システム。より安価で安定的な電力供給を実現するためにはどう改革すべきなのか。さまざまな立場の有識者に意見を聞くシリーズの第4回は、元経済産業省資源エネルギー庁資源燃料部政策課長で、エネルギー・環境政策の分析研究を続ける澤 昭裕・21世紀政策研究所 研究主幹にインタビューした。

原発が対象外の議論はおかしい

――これまでの電力システム改革専門委員会の議論をどう評価していますか。

第1に、これまで重要な電源であった原子力発電の位置づけがはっきりしないうちに、電力自由化を論じるのは拙速であり、順番を間違えている。原子力損害賠償法見直しの問題や再稼働の問題はまだ決着がついていない。また仮に自由化が進めば、電力会社は競争にさらされコストダウンを要求される。

もし経済性を度外視してでも、安全性を重視すべきというなら、自由化による競争と原子力発電の維持を両立させることは非常に難しくなってくる。原子力発電に対する国の基本姿勢が固まっていない中での自由化論議は無理だ。

第2に、システム改革の目玉であるはずの電力小売りの自由化について、ユーザーの選択の自由が広がるメリットが強調される一方、ライセンスのあり方を含めて事業者の規制の設計をどうするかが十分に論じられていないのは問題だ。これはこれからの議論になるのかもしれないが、新しい電力事業者の供給義務がどうなるのか、まったくフリーになるのか、販売と配電をどう分けるのか、といったようなことが今の議論ではほとんど見えない。参入しようとする主体がいたとしても、これでは事業計画や資金計画の立てようがない。

第3には、発送電を分離することによって電力会社の「現場力」にどんな影響があるかが懸念される。大震災後の電気の復旧はまさに現場力に支えられたもので、そうした現場の人たちの使命感やモチベーションが発送電分離後も維持できるかについては十分検討された形跡がない。

第4に、発送電一貫体制では経済的な無駄が金額的にどれぐらいあるのか、発送電分離後にはコストはどうなって、電気料金はどう変化するのか、といった定量的な議論があまりない。“現場力”のような経済モデルに入り込めない要素が分析されていないことに加え、経済モデルの範囲内のこうした問題についても議論されていない。電力システム改革はリアルな世界での選択であって、学会での論争ではないのだから、「資源配分の非効率」という言葉だけの概念だけでは足りない。もっと定量的な議論がなされるべきだ。これらが致命的欠陥といえる。

――議論が拙速で、偏っていると。

役所の縦割りの弊害が出ているようにも思う。電力自由化を進めるならば、国際的な総合エネルギー企業を育成するという観点から、ガスの自由化もこれまでと同様に同時進行させるべきだろう。電力業界の発送電分離に対応するものとしては、ガス導管の運営を分離すべきかどうかの問題もある。

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