赤字のカジノ事業で儲けたトランプの錬金術 先週NYタイムズでもっとも読まれた記事

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カジノ兼ホテル「トランプ・タージ・マハール」。手入れが行き届いていないのが遠目からでもわかる (写真:Mark Makela/The New York Times)

ここはニュージャージー州のリゾート地アトランティックシティ。営業をやめて久しい「トランプ・プラザ・カジノ&ホテル」の窓は、海からの風に乗ってくる塩分で曇っていた。「TRUMP」のロゴの金色の輪郭だけがかすかに残り、かつての高級カジノの面影をしのばせる。

そこからさほど離れていない場所にあるのがかつての「トランプ・マリーナ・ホテル・カジノ」だ。こちらも経営不振が続いて5年前に格安価格で売却された。今では「ゴールデン・ナゲット」と名前も変わっている。

タージ・マハルのカジノフロアは人もまばら

遊歩道の東端近く、さびれた場所にあるのがやはりカジノ兼ホテルの「トランプ・タージ・マハル」だ。タージは四半世紀以上前にドナルド・トランプがこの町で築こうとしたカジノ帝国の末路そのものだ。オーナーは変わったが、長い年月、ろくな手入れもされてこなかった形跡はあちこちに見てとれる。カーペットはすり減り、頭上のシャンデリアはほこりをかぶっている。スロットマシーンで遊ぶ客もあまりいない。

「信じられないほど稼いだ」

米大統領選では共和党の候補指名を確実にしたトランプは、選挙戦において、アトランティックシティでのカジノ事業の成功をしばしば誇らしげに語ってきた。また、自分のカジノに出資したウォール街の金融機関を出し抜いてやったとか、カジノ経営を通じて富裕層の間に「トランプ」の名を知らしめたといった話もあった。

そして大統領候補に自分がふさわしい理由は、こうした経営手腕を大統領執務室に持ち込み、自分の企業に対して振るってきた手腕を今度は米国に対しても振るうことができるから、というものだった。

「アトランティックシティ(での事業)は私に大いなる成長をもたらしてくれた」とトランプは5月、ある取材にこう答えた。「信じられないような額のカネをアトランティックで稼いだよ」

当時のアトランティックシティーはカジノ産業でラスベガスに肩を並べようとしていた。そしてトランプの派手なキャラクターと豪華なカジノのおかげで、この町に世間の注目やギャンブル客が集まったのも確かだ。

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