いま起きている危機は初めての経験ではない

新日鉄住金 三村明夫取締役相談役に聞く

日本のモノづくりは復活できるのだろうか。新日鉄住金の三村明夫相談役に、製造業立国ニッポンの将来像を尋ねた。

三村明夫(みむら・あきお)
新日鉄住金取締役相談役
1940年生まれ。63年富士製鉄入社、販売統括部長などを経て、2003年4月より新日本製鉄社長。同社会長を務め、12年10月より現職。総合資源エネルギー調査会基本問題委員長も。

──日本の製造業の将来をどう見ていますか?

「モノづくり」という言葉はソフトで、温かい使い方だが、モノを作るビジネス環境が整えられていないと、いかに匠の技があっても存続は難しい。

私が危機意識を持っているのは、貿易赤字だ。2012年度上期だけで3・2兆円の赤字だ。11月も依然として赤字が継続している。これが経常赤字に転落するかどうかだが、15兆円の所得収支の黒字があれば、しばらく時間を稼げるだろう。その間に、日本にとってモノづくりの持つ意味をもう少し真剣に考えないといけない。

資源も食料もない日本はこれまで、資源を加工して、それに付加価値をつけて、ずっと黒字を維持してきた。そのモノづくり立国の基本がいま崩れつつある。

──日本にモノづくり立国以外の道はありうるのでしょうか。

その場合、資源立国か金融立国の道が考えうるが、日本が資源国でないことは明らか。金融は日本の強い力の一つで金融立国の道もそれはそれで悪くないが、日本の輸入を賄えるほど強いかというとそれは無理だろう。

世界景気と日本の輸出の関係も気になっている。これまで世界の鉱工業生産と日本の輸出は同じ動きをしていたが、リーマンショック後、明らかに乖離が生じているという分析が出ている。

円高や、海外投資を猛烈に増やしたことももちろんあろうが、海外の景気がよくなっても日本の輸出が増えなくなっている。日本はこれまで、不況から脱出するときは海外景気の回復がきっかけになっていた。足元、日本が不況期に入りつつあるときに、海外景気が不況脱出のきっかけになってくれるのか。それは大きなクエスチョンだ。

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