いま起きている危機は初めての経験ではない 新日鉄住金 三村明夫取締役相談役に聞く

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──日本は戦後最大の危機に直面しているようです。

いま私たちが直面しているような危機は、日本にとって初めてでも何でもない。第2次世界大戦後もそうだし、バブル崩壊もそう。リーマンショックも東日本大震災もそうだが、そういう危機ってみんなが意識できる危機だった。対策がそうとうきつくても、国民は受け入れる。そうやって危機を乗り切ってきた。

国民も、国家も、適切に危機を認識できれば、それはそれで物事は動くもの。今回の総選挙も最終的には偉大なる常識が働くはずだ。

──新日鉄住金が誕生しました。

ここに至るまでのプレヒストリーは10年ある。急いでいたら合併はうまくいかなかった。今後3年間で2000億円のシナジー効果が生じ、われわれは何とか生き残れると思っている。しかし、日本でもっと統合再編が進まないといけない。

国内の企業数はまだまだ多すぎる。日本国内のビジネスが儲からないで、国内投資があまり増えないのは、国内の投資収益率が海外と比べて低いからだ。当社の合併も周囲に歓迎された。それは、日本にとってこういう合併が必要だと、誰もが思っている。

──最近、GDP(国内総生産)でなくGNP(国民総生産)で国力を測るべきだという議論もあります。

雇用を日本で生み、税金を日本で支払い、社会的責任を果たす度合いを見る指標としては、GDPのほうが適切だと思う。今の時代には古い考えかもしれないが、企業の役割は雇用の機会を生むこと。一方、海外移転も経営者として正しいことだと思う。どんどん海外進出をやればいい。しかし、このままだと日本はどうなっちゃうんだろう。

経営者も皆、(海外進出に)ためらいを持っている。企業は何のために存在するのか。長い歴史の中で、もしかしたら初めて、国益と企業益が乖離する時代を迎えたのかもしれない。

(撮影:今井康一) (週刊東洋経済 2012年12月29日-1月5日 新春合併特大号)

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