R25からLINEまで。日本最強のメディア野郎 新世代リーダー 田端信太郎 NHN Japan 執行役員

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田端は05年11月に結婚。結婚式では、堀江がスピーチをしてくれた。しかし、それからわずか2ヶ月後に、ライブドア事件が勃発する。

06年1月のライブドア事件を境に、世間がライブドア社員を見る目は、「有名ネット企業の社員」から「犯罪者集団」へと変わった。社員は次々と去って行く。「本当は会社が好きだけれど、婚約者の親から、ライブドアで働く人間にうちの娘はやれないと言われた」――そんな理由で辞めていく社員もいた。

田端にも他社から誘いが寄せられたが、あえてライブドアに残った。

「僕はあまのじゃくなところがあるんです。それに、もし堀江さんがいなくてもライブドアを立て直すことができれば、それは残った人たちの成果になりますよね。もう今さら失うものはないし、むしろ面白いんじゃないかという気もしたんです」

ライブドアニュースの責任者として、真っ先に田端がやったのは、自社のマイナス情報を扱ったニュースもどんどん掲載することだった。それがメディアの「中立性」を示すために大事だと思ったからだ。その行動を田端は今も誇りに感じている。

ブランドとプライドの大切さ

08年4月からは、執行役員としてメディア事業全般を統括。田端はメディア部門に課せられた「通期黒字化」というタスクを見事に達成する。人気ブローガーの記事を集めた提言型ニュースサイト「BLOGOS」を立ち上げるなど、“メディア野郎”としての才能も発揮した。

ライブドアでの成果を置き土産に、田端は新たな挑戦に乗り出す。2010年5月、コンデナスト・デジタルに転職し、カントリーマネージャーとして、『VOGUE』『GQ Japan』『WIRED』のデジタル戦略を統括することになったのだ。新興のネットメディアから、世界に名を轟かす伝統的メディアへの転職——いかにも田端らしい、極端な選択だった。

コンデナストで学んだのは、ブランドとプライドの大切さである。

これまでの経験と思索をまとめた、デビュー作の「メディアメーカーズ」。絶妙な比喩を交え、哲学的かつ実践的なメディア論を展開している。

「メディアがブランドになるには、プライドというか、気構えがすごく大事なんだと感じました。たとえば、『VOGUE』の編集長は、ファッションショーに行って自分のイスが最前列に用意されてなかったら、蹴飛ばして帰ってくるのが義務なんですよ。これは普通のネットメディアではあり得ません」

2年間コンデナストで経験を積んだ後、12年6月に、ライブドアと経営統合したNHN Japanに帰還。執行役員・広告事業グループ長として、「LINE」、まとめサイトの「NAVER(ネイバー)まとめ」、「ライブドアニュース」などの広告マネタイズを担当している。

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