日ハム・武田久はアラサーでも進化し続ける 小さな大魔神の「突っ張る」力

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武田久がこだわるのは、佐々木の言う「生きたボール」だ。相手打者の嫌がるボールを投げ続けるために、トレーニングの難度を上げているのだろう。年齢を重ね、体の衰えが否めない中、自らに鞭を打たなければプレーレベルを維持できないからだ。そうした姿勢が“アラサー”を過ぎた今も、高レベルのパフォーマンスを披露している秘訣だろう。

12年9月には14試合に登板してリーグ記録の月間11セーブ、奪われた失点はわずか1と際立つ安定感で、プロ入り10年目で初めての月間MVPに輝いている。

栗山監督が言う。

「久の言う『突っ張る』という表現は、自分らしさが最後までブレないという感覚なのかな。信念を持っている感じをすごく受けます。誰が何を言っても、ブレない感じがすごくある。信念というのは野球への取り組みだったり、試合での投げっぷり、準備の仕方だったり、自分の生活スタイルであったり、すべてですよね」

来シーズンはさらに「突っ張る」

全身を使う武田久のフォームは、肉体的負担が極めて多い。11年シーズン序盤は右脚の内転筋に痛みを抱えながらプレーし、ストレートは本来の質ではなかった。ただ、肉体的負担を嫌ってフォームを変えては、武田久は武田久でなくなる。そう思うからこそ、トレーニングの強度を上げながら良質なフォーム、球質を求めているのではないだろうか。

迎える35歳のシーズン、武田久はさらに「突っ張る」つもりだ。12月2日付の日刊スポーツによると、彼はこんな話をしている。

「このポジション(クローザー)ができなくなったら、やめどき」「休まないことが最低限であり、一番難しいこと」

クローザーという最も過酷なポジションで、突っ張り続ける生き様は実にカッコいい。また、そんな姿を貫いているからこそ、いつまでも球界屈指のクローザーでいられるのだろう。

中島 大輔 スポーツライター

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なかじま だいすけ / Daisuke Nakajima

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。2005年夏、セルティックに移籍した中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた「野球消滅」。「中南米野球はなぜ強いのか」(亜紀書房)で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。NewsPicksのスポーツ記事を担当。文春野球で西武の監督代行を務める。

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