年収200~400万円の"新中間層"が生きる道 藤原和博(その5)

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過去10年、日本の仕事をめぐる状況は様変わりした。
『10年後に食える仕事 食えない仕事』。仕事の未来をマトリックスで4分類している。
インド、中国では毎年数百万人単位でハングリーな大卒者が誕生。また、ネット・通信環境が大きく改善したことで、定型業務やIT開発を新興国へアウトソーシングできるようになった。仕事の枠を日本人同士で争っていればよい、という時代は終わった。さらに、人口減少に伴う国内マーケットの縮小も追い打ちをかけている。
これから日本の仕事はどう変わるのか? 10年後にも食えるのはどんな仕事なのか。当連載では、ベストセラー10年後に食える仕事 食えない仕事の著者であるジャーナリストの渡邉正裕氏が、"仕事のプロ"たちとともに、仕事の未来像を探っていく。

(司会・構成:佐々木紀彦)

【対談(その4)はこちら

——前回の対談では、「大学と宗教が日本ではうまく機能していない」という議論から始まり、後半では、「これから“準公務員”という仕事が生まれてくる」という話になりました。今回は、“準公務員”に代表される、新中間層のキャリア設計について話を進めていきたいと思います。

渡邉:藤原さんの話では、これから若者の多くは、準公務員的な仕事に就くことになるということでした。ただ、今はそうした制度がないので、難しいですよね。当面、若者はどんなキャリアを追求することになりますか。

藤原:まず、一部の人たちは、「自分は絶対、人の100倍努力してグローバルで成功し、年収を今の10倍から100倍に持って行く」という方向に進むと思う。たとえば、オリンピックのアスリートを目指す人もいるわけじゃないですか。そういう人は、スポーツやビジネスの世界に限らず、あらゆる分野で増えてきているんではないかな。

渡邉:増えていますかね?

藤原:増えていると思うよ。サッカーで言うと、私が小学生のとき、世界レベルで活躍していたのは釜本邦茂だけだった。それが今では、海外組が20人以上になっている。日本代表メンバーも、海外で活躍している選手ばかりになったでしょう。これはすごいと思うんですよ。

ほかにも、欧州が源流のクラシックバレエやピアノやバイオリンでも、日本人がマスターになったり、グランプリを取ったりしているでしょ。そこにはちゃんとおカネも落ちている。だから実は、ものすごく多様化した中で、世界に出て行っている人たちは多いんですよ。僕らが気づいていないだけで。

ただ、問題になるのは、普通にサラリーマンをやっている人たちだよね。渡邉さん流に言えば、その人たちは、どこにジャパンプレミアム(日本人ならではの価値、差別化)を見つけるかということです。

渡邉:そうです。実際、半導体の技術者や、薄型テレビを作っている人たちは、日本で仕事をしていても、韓国には全然勝てません。これまで1万時間以上かけて半導体一筋でやってきた人は結構悲惨です。希望退職を強いられて、40歳ぐらいで仕事がなくなっている人はいっぱいいます。ほかの分野でも、こういうふうに転落していく人がどんどん増えて行くわけですよ。

藤原:時代の流れに気づくか気づかないかは、もっぱらその人たちの責任だと思う。渡邉さんは、そういう人まで救おうという気持ちを持っているのかもしれないけれど、それは難しいんではないかな。

渡邉:ただ、そういう人が生活保護に頼らざるをえなくなると、税金の負担が増えてしまいます。だから、結局はみんなで支えないといけない。犯罪と一緒で、国全体として何とかしないといけないわけですよ。

藤原:なるほど、そうか。国家の安全保障問題だと。

渡邉:その人の子どもまで被害者になるっていう話になってくるので。

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