日本化する中国?毛沢東という「国体明徴」

戦前日本の元祖「愛国無罪」から、日中関係のヒントを探る

振り返れば、中国ニュースに釘づけの年

著者:與那覇潤(歴史学者、愛知県立大学准教授) 撮影:今井康一

2011年を代表する事件はむろん東日本大震災だが、12年でそれに相当するニュースは、やはり夏に沸騰した尖閣問題による、日中関係の急激な悪化だろう。

石原慎太郎都知事(当時)が都による島嶼購入と港湾整備等の現状変更の計画をぶちあげ、やむなく野田佳彦政権は(現状維持を前提に)国有化したが、これが中国側には日本政府による自国への挑戦と受けとられ、日系企業が襲われるなどの激しい反日デモが起きた。

大型店舗や工場が破壊される規模の暴徒化は、従来の歴史問題、靖国問題の折には見られなかったことである。

私も含めて、ふだんはさほどチャイナ・ウォッチングに熱心でない日本人まで中国ニュースに釘づけとなったが、当時語られた分析には大きく三つのパターンがあったように思う。

一つめは、デモを民間主導の反体制的なものと捉え、直接共産党を批判することによる弾圧を避けるために、党の側も否定できない「反日」の看板を利用しているとみるもの。

二つめは、これは逆に共産党の側が動員をかけた官製デモであり、政権が民意のガス抜きとして積極的に「反日」を煽っているとするもの。

三つめは両者の折衷形態で、共産党指導部内の路線対立(たとえば胡錦濤派と習近平派のそれ)が背景にあり、片方がライバルを追い落とす材料として、デモを政治的に利用しているとする解釈である。

特に、直前に胡錦濤によって失脚させられた薄熙来・前重慶市長の支持者が尖閣デモにも集まっているとの情報が流れるにつれ、第三の認識をほのめかす報道が増えていった印象がある。

そのなかで注目を集めたのが、デモで掲げられた毛沢東の図像だった。

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