優秀な子を育てる親は「苦手」に目を向けない 学校改革には「変わった先生」がもっと必要だ

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小林:あと私のなかで転機になったことでいえば、先生にいじめられた経験は大きいと思います。小学校5年生の時の話なのですが、授業を一生懸命聞いてテストの成績も良かったので、宿題をやる理由がわからなかったんです。なので、今思えば、宿題を忘れたことへの言い訳みたいなものだったのかもしれませんが、「なんで宿題をやらなければならないんですか?」と何気なく言ったら、「宿題はするものでしょ!」と先生にとても怒られました。「でも、やらなくても理解できているんですが……」と小学生の素直さに任せて言ったら、嫌われていじめられてしまいました。まぁ、先生の立場に立てば、こんな嫌な小学生はいなかったと思いますけれど(笑)。

加藤:とても残念な話ですね。

小林:本当にそうです。習熟度や生徒のそれぞれの個性の差を前提とした仕組み作りを公教育の中にも採り入れていく必要があると私は考えています。「この子はここが伸びている」「この子はここがこうだよね」というそれぞれの個性をしっかり認識しながら教育していく。この認識ができてこないと、「1億総活躍」なんかできない。

加藤:高校時代はカナダに留学されていたんですね。

小林:1年生までは日本の高校に通っていましたが、先ほどお話ししたような先生との衝突があって、「私はもっと個性を伸ばすんだ」って1年で辞めてカナダに行きました。かなり個性的なことをしたつもりだったのですが、逆に自分の個性がいかにないかを痛感する2年間になったのです。

加藤:どんな体験をされたんですか?

小林:12年間ピアノをやっていたので「ピアノができる」という自信が私にはあったんですが、カナダでは「ピアノができる人」というのは即興でジャズを弾けるプロみたいなレベルで、私なんて足元にも及びませんでした。ほかにも語学でも向こうの人は10カ国語もしゃべれる人がいたり、バスケでは体格差で、はなから相手にならなかったり。得意だと自分で思っていたことが、比較してみると自慢できるレベルなんかでは全然なかったんです。簡単に言うと、私が井の中の蛙だったことを知らされました。そして「私って本当に個性がない人間だな」と心底打ちのめされて帰ってきました。

対人能力はビジネススキルだった

大学に入ってもなんとなく4年間自分の好きなことをやりながら過ごしていたのですが、社会人1年目に「あ、私にも取り柄があったんだ」と教えてもらう機会があったのです。

加藤:どのような機会が?

小林:大学を卒業して入社したモルガン・スタンレーでの1年目の話です。当時、インド系アメリカ人の男性が上司で、彼に「君のいちばんの使命はピープルスキルだ」と言われたことがありました。それまで勉強や音楽などはスキルだったとしても、対人能力自体がビジネススキルだなんて思ってもみませんでした。「キャッシュフローモデルを作ってもミスだらけかしれないけど、君のピープルスキルはすごい」と言って褒めてくれたのです。そこから自分が何をセールスポイントにするのかを考えられるようになりました。長所のとらえ方自体を変えてもらった、とも言えます。

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