社会の縮図としてのプロレス
常見 陽平(以下、常見):この本は、サラリーマン必読の本です。プロレスって会社と社会の縮図だと思うんですよ。働いていると、さまざまなドラマに巻き込まれます。出世争いや左遷といった人間模様、なんのためにこれをやっているんだと空しくなる瞬間、反則攻撃……。
政界だって、毎日がプロレスですよ。以前、政治家とテレビの討論番組に生出演した時も、番組での白熱とした議論と、CM中と控え室での和気あいあいとした雰囲気のギャップを見て、人生考えました。世の中のそういうたぎる闘いや矛盾がプロレスには凝縮されているなと思うんです。本を読んで改めて思いました。
三田 佐代子(以下、三田):しかも、普通の会社じゃ無理ですが、プロレスラーだったらその悔しさを持ってリング上で上司を殴ったりできますよね(笑)。普通の会社では大問題になりますが、プロレスはお客さんから拍手喝采されます。リングの上では、人間が体も感情もむき出しにして戦っています。自分ができないことを彼らがリング上で表現してくれて、それを四方から見ることができます。だからこそ、彼らに自分を重ね、熱狂できるのでしょう。
常見:「週刊ファイト」の編集長だった井上義啓さんの「プロレスは底が丸見えの底なし沼」という名言を本でも引用されていますが、本当にそのとおりですよね。
それにしても、プロレス専門チャンネルの「FIGHTING TV サムライ」が1996年に開局してから、三田さんはずっとキャスターとして関わられていますが、1996年から2016年までの20年間はプロレスにとって激動の時代でしたよね。
三田:格闘技にプロレスが呑まれ、メジャー団体の経営が揺れ、インディーズの活躍が目立ち、そして今のプロレスブームへと続いていく。プロレス凋落から、みんなで努力して上がってきた、そういう20年だったと思います。
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