高齢者が若者から仕事を奪うという「ウソ」 高齢者の仕事が増えれば若者の仕事も増える
なぜ米国経済の成長は加速しないのだろうか?
経済学者が注目する要因は、主に2つある。1つは生産性の伸びが思わしくないことだ。生産性成長率、つまり、労働者1人当たりの1時間のアウトプットの成長率は、2005年以来、年率平均1.3%という低い水準にとどまっている。それ以前の10年間の成長率は2.8%だった。生産性成長率の伸び悩みについてはよく議論されており、特に技術イノベーションの経済に対するインパクトや、事業投資や公共投資の観点からの議論が多い。
米国では毎日約8000人が65歳を迎える
しかし、2つ目の要因、すなわち「高齢化」については、あまり議論が行われていない。
1946年から1964年までの間に生まれた「ベビーブーム世代」のうち、最も年齢の高い層がメディケア(高齢者向け医療保障制度)を利用し始めている。2030年まで、毎日約8000人のベビーブーム世代が65歳の誕生日を迎える。若者が減り、退職者が増えている社会では、労働力の伸びは鈍い。
基本的には、人口構造の変化は避けられない。2029年にはベビーブーム世代の全員が65歳以上になり、総人口の20%以上を占めると国勢調査局が予測しているが、その予測にはあまり議論の余地はない。2056年には、65歳以上の層が18歳以下の層より大きくなると予測されている。
今後の生産性の伸びを予測することに比べれば、人口構造の問題ははるかに予測しやすい。そうではないだろうか?
「私たちは今日の世界を基準として単純な予測を行い、恐ろしいシナリオを描き出している」と、世界銀行のシニア・エコノミスト、ジョハネス・コットは話す。「このアプローチでは、世界は変化しているということが考慮されない」。