時代に負けない、キャリアの”背骨”の作り方 普遍性の高い、自分らしさを見つけよう

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これは明確な自己ブランド意識である。企業ブランド同様、提供価値の約束を表し、自分らしいキャリアをつくる上でも、自分のブランド意識を持つことは重要だ。しかし、彼の場合、当初はその意識の仕方が具体的すぎた。「その分野」でくわしいことが10年後にも価値があるかは誰にもわからない。

その技術者は、こう続けた。「その後何年かして新商品の開発に加わり、新しいことを生み出す面白さを知った。そこで、『新しいことをやるんだったら、あいつを入れると面白いぞ』と言われるような人になりたいという思いが加わった」。

ここで彼の自己ブランド意識が普遍化していることに注目したい。自分らしさを、ある特定の具体的な分野から、より普遍的なものにシフトさせているのだ。

別のインタビューでは、「最近ようやく自分がどういうSEになりたいかわかった」と話す40代の女性SEがいた。彼女はあるとき、人から指摘されて、自分が初対面の人のところに行って、「これ、お願いしますよ」と協力を得るのが、人に比べて長けていることに気がついた。

そこから、「多様な人たちをうまく巻き込んでいくSE」が自分らしいキャリア像になったのだという。

彼女はワーキングマザーである。働きながらの子育ては、いろいろな人の協力を得ることが不可欠だ。ワーキングマザーとしての経験から彼女は、いわば「感じよく、図々しくお願いする能力」を身に付けた。

これは、いわゆる「横のリーダーシップ」だ。上下関係だけでしか人を動かすことができない「縦のリーダーシップ」しか身に付けていない組織人が多いなか、これは意外な強みだと、はたと気づいたのだという。

このように、より普遍性の高い自分らしさに気づき、これを自分のキャリアの支柱に据えようと意識することが、自分らしい幸福なキャリアをつくるカギとなるだろう。

背骨になる専門性を生涯かけて掘り続ける

専門性について、別の角度から考えておこう。ここまで読んで、特定の専門知識に依存することの危険性と、自分がそのスペシャリストになろうと思っても、「想定外変化」が起こる時代には先行きは不透明だということが、おわかりいただけたであろう。では専門性はいらないのかというと、そうではない。やはり専門性はいるのだ。

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