あなたはネットの本質を理解していますか 破壊的なイノベーションを起こした理由

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「味が適度にブレている」とか「健康を第一に考えてくれている」というようなことは、仮想化にあたっては枝葉末節だ。「何が出てくるかわからないけど我慢しろ」が家庭料理の本質、基本的な態度である。未来食堂はセンスのいい仮想化に成功しているように見えた(センスの悪い仮想化は長続きしないという例は後述する)。

仮想化は、昨今の情報通信技術とは無関係に太古の昔から行われていたことでもある。狼煙(のろし)を合図に突撃するなんてのも一種の仮想化だし、かの黒電話でさえ、とりあえず声を聞くだけて会ったような気になっておくための仮想化技術だったとみなせる。

最近はこの仮想化されたはずの電話がさらにもう一段仮想化され、Skypeなどのスマホのアプリに成り下がってしまった。仮想化されたネットワークの上に電話アプリが搭載され、そのアプリが「俺が電話だ」と言い張っている様子は、古くから通信業界にいる人にしてみれば本末転倒で実に奇妙だと思うはずである。

かと思ったら、さらにそれを仮想化してLINEのスタンプでいいじゃん、ということになっていて(これはこれで実に良くできている)どこが終点なのかさっぱりわからん。

仮想化は続くよどこまでも、だけどそろそろ勘弁してくれ、というのが(筆者も含む)中年オヤジの悩みだろう。もう若くないのでついていくだけでタイヘンである。

ちなみに可愛いLINEのスタンプを虫眼鏡で拡大して見てみると、3種類の色のドットが明滅しているだけであることが良くわかる。これがデジタルデータの正体だ。遠くから見るとスタンプに見えるように演算しているに過ぎない。

まあ何事もあまり近くで見すぎると幻滅することが多いのが世の常なので、万事ぼやーっと遠くから見て見ぬ振りをしておくに限る。

「情報通信革命」の本質はすべて仮想化である

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「RFC(Request for Comments)」には、IT関連の様々な文書が揃っている。ただ、RFCは規約(ルール)というよりも勧告(こうした方がいいよ)という性格が強く、それもまたネットならではのユルさにつながっている

「情報通信革命だ」ということでメディアが大騒ぎしている事象──例えばクラウドソーシング、クラウドファンディング、フィンテック(fintech)、ビッグデータ、人工知能、インダストリー4.0、自動運転などは、仮想化の技術という意味においては全部同じである。

いちいち別の言葉で大騒ぎしたほうが雑誌や書籍が売れ、広告や視聴率を稼げるというだけのことだ。筆者もこれに加担することを商売にしている(実に嘆かわしい)。

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