あなたはネットの本質を理解していますか 破壊的なイノベーションを起こした理由

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ついでに言えば、これらのバズワードは大半が政府の「新産業構造ビジョン」に含まれていて、見事なまでにすべてが欧米の後追いである。日本に住む者としては、ちょっと恥ずかしい。

会社経営の観点からすると、まったくアタマを使わずに欧米トレンドに便乗しただけの差別化要因ゼロの二番煎じ戦略は、単なるレッドオーシャンに過ぎない。そのため、大きくコケることはないが、おそらく儲からないのだ(アニメとゲームとおもてなしと職人芸と和食に集中して資源を投入し、散ってしまうほうが日本らしいと思うのだが)。

別の業界では、まるでたった今始まったかのように「私たちはモノではなくコトを売る時代に足を踏み入れたと思うのです」なんてことをしんみり語っている愚鈍な人が散見されるが、太古の昔からの仮想化の歴史をご存知ないのであろう。これはこれで心が痛む。

デジタル・データが仮想化を劇的に加速させた

ただし、仮想化は割と最近になって、インターネットを含む情報通信技術によって劇的に加速された、というのが第二幕である。2番目に重要なポイントがこれだ。

なぜとんでもなく加速されるのかというと、その安っぽいルールに則って運んでいるものがデジタル・データだからだ。デジタル・データには見逃すことができない3つの特徴がある。

複製(コピー)してもまったく劣化しない
複製(コピー)するコストはゼロとみなせる
搬送は瞬時に完了し、運賃は事実上無料である

 

ヤマト運輸あたりが聞いたら悲鳴を上げそうな特徴である。

手紙を書いて、
封書に入れて、
切手を貼って、
ポストに投函すると、
郵便局員がバイクでやってきて、
郵便局に集めた後、
トラックに積んで、
局間を移動して、
別の郵便局員がバイクで配達してくれる

 

これらを事実上タダで行うのがインターネットメールだ。配送料がほぼ無料とみなせる上に、数万人くらいまでなら瞬時に届くという、情緒もへったくれもない破壊的仮想化世界(空間)なのだ。

デジタル・データをインターネットというプロトコルで運ぶ仮想化作業に課題があるとすれば、この仮想化のプロセスにおいて剥がれ落ちてしまったものの中に本質的なものがあった可能性に気づきにくいということだ。利便性がそれを隠蔽してしまうのである。前述のインターネットメールにはない効能が、特に手書きの手紙にはあることくらいは誰もがわかっていることだが、つい利便性に負けてしまうわけだ。

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