竹中平蔵(上)「リーダーに必要な3つの資質」 世界のリーダーと日本のリーダーの違い
世界のリーダーと日本のリーダーの違いは何か。
まず世界のリーダーは、「世界で今何が起きているか」について貪欲に情報を求め、洞察を深めている。
たとえば、とあるインドのグローバル企業のCEOは、年に数回、世界から自宅に専門家を招き、一日中缶詰めになって議論している。私もそのメンバーの一人だが、ほかにも、元米財務長官のローレン・サマーズや、英国国際問題研究所(IISS)所長のジョン・チップマンなど、そうそうたるメンバーがそろっている。
彼はグローバル企業のCEOなので、いろいろな資料やデータが部下から上がってくる。だが、最後の決断は自分一人で下さなければならない。そのためには、頭の中に、「世界で何が起こっているか」について洞察をつくっておく必要がある。だから、わざわざ世界から専門家を呼んで意見を聞いている。
もっと孫さんのようなトップを
ほかにも、ある香港の富豪は、ダボス会議にやってきて、ホテルの部屋に陣取り、次から次へと参加者を招いていく。私が招かれたとき、前に呼ばれていたのは米国の大統領補佐官だった。彼がダボスに行くのは、会議に出るためではなく、そこに集う人に会うためだ。
つまり彼らは、組織のトップでありながら、組織と戦っているところがある。組織から上がってくる意思決定そのものに対して、批判的な目を向けながら、自分で最終的な判断をするという姿勢を持っている。私はこれこそが本当のリーダーだと思う。
ダボス会議には、世界トップ企業のCEOが集うイベントがあるが、そこに行くとみなプロの経営者ばかり。去年はあの会社のCEOで、今年からまた別の会社のCEOといった感じで、みな顔見知りだ。リーダーであることをプロフェッショナルな仕事にしている人がいる点が、日本とすごく違うところだと感じる。
日本のリーダーの場合、組織の上に完全に乗っかってしまう人が大半だ。組織の生え抜きで、兄貴分のような形で、トップに上り詰める人が多い。もっとソフトバンクの孫正義さんのようなトップが増えたら面白いと思う。