フェイスブックは「中立」な報道機関ではない 「アルゴリズムに偏見はない」は幻想だ

拡大
縮小
フェイスブックは今や、世界随一の「ニュースメディア」になりつつある。写真はマーク・ザッカーバーグCEO(写真:Jim Wilson / The New York Times)

フェイスブックは世界で最も影響力を持つニュースサイトだ。

数字から見ればそれは明らかだ。毎日、10億人を超える人々がフェイスブックのニュースフィードを読んでいる。それによって得られる利益も膨大なら、フェイスブック経由のほかのニュースサイトへのアクセスも膨大だ。

ニュース業界を動かす力

その一方でフェイスブックは、もっと目立たない形でニュース業界を動かす力を手にしている。ニュース業界では記者も編集者も重役も、まるで生まれたばかりのひなが親鳥を見るかのように――つまりあらゆる知識とメシのタネの源泉として、そして危険と隣り合わせの世界における行動の指針として――フェイスブックを見ている。いい例が、ニューヨーク・タイムズが先ごろ始めたライブ動画の配信だ。どういうことかって? フェイスブックがそういうサービスを始めたのだ。

だがフェイスブックのことを、現実世界で起きる出来事を左右できるような強大な力を備えた「報道機関」だと考える米国人はごく少数だ。大手メディアについて論じるときに、ソーシャルメディアの最大手であるフェイスブックが対象に含まれることはまずない。それはフェイスブックが、表向きには経験論に基づいて動いているからだ。フェイスブックのニュースフィードに表示されるのは、中立公正を謳う人間の主観的な姿勢に左右されることのない、客観的な真実のようなものだと思っている人は少なくない。

だがそれは間違っている。ニュースサイトのギズモードは先ごろ、フェイスブックの「トレンディング」欄(米国などで提供されているサービスで、ニュースフィード画面の右段に今話題になっているニュースのリストが表示される)の担当チームが、保守的な視点の記事を表示させないよう操作していたと報じた。フェイスブックはすぐにこれを否定した。

次ページトランプ大統領誕生の阻止に協力?
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT