クックパッドは企業統治の選択を誤っていた 「強行突破」の行動に出た大株主の創業者

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「仮にクックパッドが監査役会設置会社又は監査等委員会設置会社であれば、取締役の選任に社外取締役が意見を述べる以上の権限を行使することはないため、今回のような紛争は起きなかった可能性が高い。統治形態の選択が異なれば紛争が起こらなかったとすると、問題の本質は佐野氏の行動自体の是非というより、統治形態の選択にあったのではないか。本来は国内外の機関投資家も含めた多様な投資家群を想定したグローバル企業が採用する、指名委員会等設置会社という統治形態をとっていたこと自体が、企業の実態とミスマッチだった」(佐藤弁護士)

株式市場の評価はさておき、佐野氏はクックパッドが事業の多角化によって自分の理想とする企業とは別のものへと変わっていくことに我慢ならなかったのだろう。そうした行動に大株主の佐野氏が出た心中は理解できなくもないが、そうであるなら手順を踏んで指名委員会等設置会社であることをやめ、自身が経営を主導するオーナー企業としての立ち位置を明確にした方が、筋が通るといえるのではないか。

注目される新執行部による事業計画

「大半の株式を保有するオーナーが主導するベンチャー型の企業には、東証一部上場であっても、オーナーが情熱を持って経営を行い、困難を乗り越えて結果を出すことで自らの正当性を示す、という経営スタイルで好業績を挙げる例が珍しくない。佐野氏が43.6%を有するという株主構成から考えれば、クックパッドもオーナーが経営に直接関与する企業として、手続よりも結果で勝負すべき企業だということだろう」(佐藤弁護士)

新執行部が示す事業計画の具体的内容は、今後徐々に明らかにされるだろう。指名委員会等設置会社の枠組みを強行突破して旧経営陣を排除した以上、現経営陣は短期的に市場でどう評価されるかという観点よりも、佐野氏の経営理念や価値観をどのように実現するかを、全面に出してくるのではないかと推察される。

クックパッドは取材に対し、「先々は個別の取材を受けるタイミングがあるかもしれないが、現段階では特にお話できることはない。必要があれば適宜発表していく」とコメントしている。今回の方針の大転換は、はたして吉と出るだろうか。

関田 真也 東洋経済オンライン編集部

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せきた しんや / Shinya Sekita

慶應義塾大学法学部法律学科卒、一橋大学法科大学院修了。2015年より東洋経済オンライン編集部。2018年弁護士登録(東京弁護士会)

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