長期国債購入を月850億ドルに拡大 FRBの12月金融政策見通し(Fedウォッチャー)

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今月初めの大統領・議会選挙は、オバマ大統領の再選と両院議会のねじれという結果に終わった。直後から米金融市場ではボラティリティが高まり、米株価は半月の間に5%近く値を下げ、米国債利回り(10年)も1.60%を割り込んだ。


「財政の崖」に怯える金融市場


本当の理由は分らないが、まるで「変わらないワシントン政治の構図」という選挙結果を突きつけられた投資家が、巨大な「財政の崖」を前に立ちすくんでしまったかのようだ。GDP比で3%ほどにも達する「財政の崖」の回避に失敗すれば、米国経済が景気後退に陥ってしまうことは疑う余地がない。

欧州経済や新興国経済の体力の弱さを踏まえれば、世界経済を巻き込む結果となるだろう。これまでは「なんとかなる」と思っていたが、崖が現実になるのか・・・。

11月16日のオバマ大統領と議会指導部との会合は、金融市場の反応を見る限り、怯える投資家への鎮静剤になったといえる。「財政の崖」の回避に向けて共和党と民主党が一致して取り組む姿勢が示されたことに安心したようだ。しかし、「財政の崖」をどのように回避するのか、具体策はまだこれからだ。議会が開かれる来週以降、再び不透明感が高まると予想される。


住宅市場に狙いを定めたQE3の効果


「財政の崖」に加え、世界経済全体が勢いを失いかけている中、FRB(米国連邦準備制度理事会)の課題は、上向き始めた住宅市場の動きを何がなんでも支え抜く、ということだろう。

バーナンキFRB議長の言葉を借りれば、住宅市場は、米国経済というエンジンが息を吹き返すのに欠かせないピストンであり、そのピストンがようやく回り始めてきている。楽観はできないが、「この数年間で初めて、住宅部門が良くなってきて、成長と雇用をもたらしている」(バーナンキ議長講演、11月15日)のである。

QE2(量的緩和第2弾)やツイストオペ(保有する証券ポートフォリオの残存期間を延ばす)では、購入対象を中長期の米国債とすることで、FRBは住宅ローンや自動車ローンなどの個人向け金融と企業金融の両者を刺激しようとしてきた。

これに対し今年9月のFOMC(連邦公開市場委員会)で決まった追加緩和は、住宅金融市場にターゲットを絞り、エージェンシーMBS(住宅ローン担保証券)を無期限で購入するプログラム(いわゆるQE3)となった。

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