藤原:だから今の20~30代が貧困だと言うけれど、ある時点で相続がドンと来る。少なくとも、日本で今暮らすときに、異常におカネがかかるのは住宅費だけでしょう。たとえ都市部であったとしても。
渡邉:そうですね。
藤原:住居費がタダなら、おカネはそんなにかからない。だから若い人たちは非常に合理的な選択をしている。私は、実家に寄生する、パラサイトすることは悪いと思わないの。むしろ当然だと思うんですよ。だって実家から外に出ただけで、6万円だ、8万円だ、と家賃がかかるのは日本ぐらいですから。
今シェアハウスがどんどん出てきているでしょう。シェアハウスは、ワンルームマンションからトイレ、バス、キッチンを切り出して共有にしているから、部屋がすごく広い。私はリビタという会社をすごく応援していて、その会社が原宿に、THE SHARE(ザ・シェア)という物件を持っている。原宿のど真ん中、原宿警察の目の前という立地なのに、家賃がリーズナブル。
シェアハウスがどんどんはやると同時に、ドーンと相続が起きて住居費がタダになれば、東京でさえもすごく住みやすくなりますよ。生活費もそんなにかからないし。コンビニで売っているラーメンもすごくおいしくなったしね(笑)。100円でほとんどのものが買えるでしょ。
渡邉:確かに。そうすると、バイトで月13万円ぐらい稼げば、普通にそこそこ暮らしていけるようになる。
藤原:そう。ただ、人間は「暮らしていく」こととは別に、ちょっとした貢献をして褒められたいという欲望がある。だから、財団をつくるとか、赤十字に入るとか、国境なき医師団に入るとか、そういうことではなくて、もっと地味なレベルで、社会貢献をする人たちが増えてくると思う。
渡邉:でも、そういう人ばかりになると、日本の国力が落ちてきませんか? 上を目指さない人ばかりが増えていくと、活気もなくなってしまう。
藤原:でも、上を目指す人というのは、グローバルで戦うエリートの人たちの話でしょう。だから、付加価値の高いエリアで、グローバルな勝負をする人がどれくらい日本にいるかですよね。渡邉さんは、どれくらいいると思う?
渡邉:全体的に、みんな上を目指さなくなっているというか、すごく保守的になっている。大企業、公務員志向が若い人ほど高い。雇用さえ安定していて、少し稼げればいいという人が、僕らの時代より増えているのは間違いないと思うんです。だから、グローバルを目指す人が減っている印象がすごくあるんですよね。