ガラパゴス的雇用が、生き残る道 未来の仕事はどうなるのか?

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過去10年、日本の仕事をめぐる状況は様変わりした。
『10年後に食える仕事 食えない仕事』。仕事の未来をマトリックスで4分類している。
インド、中国では毎年数百万人単位でハングリーな大卒者が誕生。また、ネット・通信環境が大きく改善したことで、定型業務やIT開発を新興国へアウトソーシングできるようになった。仕事の枠を日本人同士で争っていればよい、という時代は終わった。さらに、人口減少に伴う国内マーケットの縮小も追い打ちをかけている。
これから日本の仕事はどう変わるのか? 10年後にも食えるのはどんな仕事なのか。当連載では、ベストセラー10年後に食える仕事 食えない仕事の著者であるジャーナリストの渡邉正裕氏が、仕事のプロたちとともに、仕事の未来像を探っていく。
雇用の未来をめぐって、討論する筆者とリンダ・グラットン氏(撮影:今井康一)
グローバル化とIT化により、競争がますます加熱する世界の雇用市場。世界に飛び出し、多国籍のライバルと競うべきか。国内市場のメリットを生かすべきか。
そのテーマをめぐって、話題のビジネス書『ワーク・シフト』の著者で、ロンドン・ビジネススクール教授のリンダ・グラットン氏と、『10年後に食える仕事 食えない仕事』の著者で、ジャーナリストの渡邉正裕氏が、正反対の主張をぶつけ合った(関連記事:「日本でも、中間層の仕事がなくなる?」)
グラットン氏との議論を踏まえて、渡邉氏が、日本版「ワーク・シフト」を大胆に予測する。

失われる“先進国生まれプレミアム”

「日本はグローバル化すべきか」との問いに、グラットン教授は「難しい問題だ」と答えた。グローバル化は、先進国の中間層の人たちの収入と職を失うことを意味するため、日本があえて“血だらけの赤い海”に突っ込むことを、さすがに肯定しなかった。

2025年の「日本以外の」世界が、『ワーク・シフト』に描かれた景色に近いという点には同意する。すなわち、世界規模で人材市場の統合が進み、英語を共通語として、地球の反対側同士でウェブを通じた協働が増え、上位の優秀層は生まれた国を問わず大活躍するチャンスが増える。一方、先進国の中間層以下は“先進国生まれプレミアム”が失われ、新興国の人材に浸食される形で、賃金が下がる。

日本も、その一員となるべきか?拙著『10年後に食える仕事 食えない仕事』で示した、現就業人口の約61%を占める「外国人と競合しない」職(たとえば、住宅・保険営業など)で中間層が生き延びる可能性について、グラットン教授は「日本のほうが賢明かもしれない」と理解を示す一方で「閉ざされた状態の日本の未来には賛成しかねる」と述べた。

これは教授の研究テーマだそうで、著書でも「多様性は単一文化を凌駕する」との持論を述べている。対談でも、多様な人種のシナジーで新事業が生まれるとされたシリコンバレーを例示した。

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