「働いても幸せになれない日本」に生きる若者 労働はもう日本の貧困対策を担えない
若者に貧困を強いる劣悪な雇用環境
藤田孝典(以下、藤田):私の新著『貧困世代』(講談社現代新書)と今野さんの新著『求人詐欺』(幻冬舎)は、多くの問題意識を共有しているように思いました。一言でいうと、いまの若者は現在、そして将来も、大変な貧困に陥らざるをえないような環境に置かれているということです。
私が所属しているNPO法人「ほっとプラス」には、食べるものにも困って、栄養失調状態で訪れる10代や20代の若者がいます。彼らは決して特殊な少数派ではなく、生活に困窮した若者の相談は後を絶たないんです。
にもかかわらず、上の世代はそういった若者が置かれている現実をまったく理解できていない。どう考えたって、現在の日本の社会構造や雇用環境は、若者に貧困を強いる劣悪なものになっているのに、それがまったく伝わらない。
今野晴貴(以下、今野):「若いんだから、働けばなんとかなるだろう」とかね。
藤田:ええ。私は「労働万能説」と呼んでいますけど、いまや安定した生活ができる賃金を得られる仕事に就ける人は限られています。逆に、働いてもまともな賃金を得られる保証のない仕事は増える一方です。働いたって、生活が豊かにならないんだから、労働万能説はもう通用しません。
今野:歴史的に考えると、日本の貧困対策って、実際に労働が担っていたんですね。国際比較をしても、日本の失業率はものすごく低い一方で、社会保障は劣悪です。
重要なのは、その高い就労率は派遣労働と一体だったということです。リーマン・ショック以前だって、政府は積極的に失業者を派遣労働者にする政策を推し進めることで、失業率の上昇を抑えようとしていました。