東芝、原発事業の減損2600億円に付く疑問符 楽観的な事業計画には手を付けなかった

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東芝メディカルはキヤノンに売却へ(撮影:尾形文繁)

全体の財務状況も相変わらず火の車だ。医療機器の子会社・東芝メディカルシステムズ(東芝メディカル)の売却益3800億円(税引後)の寄与などにより、2016年3月期の純利益は4700億円の赤字へと、2月時点の予想から赤字幅は縮小する見通しとなった。

それでも2016年3月期末時点の株主資本はわずか3000億円、株主資本比率は5.5%と綱渡りの状況が続く。平田政善CFO(最高財務責任者)は、「電機メーカーとしては30%は欲しい」と述べ、依然として厳しい状況にあることを認めた。

「虎の子」はもう残っていない

資本増強を急ぎたいところだが、特設注意市場銘柄に指定されており、市場からの調達は難しい。室町社長は、「資産売却も全てできているわけではない」と述べ、東芝メディカルの売却に続き、さらなる事業売却も視野に入れていることを示唆。東芝が筆頭株主のある会社の幹部は、「いつ株を売られるか分からない。自己株買いなどをしてその時に備えなければならない」と胸の内を明かす。

これまで富士通とバイオ社と統合交渉をしていたパソコン事業については、「白紙」に戻り、今後も売却や統合を含め、「様々な選択肢を検討していく」(室町社長)としている。とはいえ、パソコン事業を売却できたとしても、財務改善はあまり期待できない。今の東芝には、東芝メディカルのような「虎の子」の事業はもうほとんど残っていないのが実情だ。

東芝は原子力事業を軸とする発電事業、半導体事業、インフラ事業を今後の3本の柱としている。いずれも巨額の投資が必要とされる事業だが、限られた資金で戦っていかざるをえない。同社の正念場はしばらく続きそうだ。

富田 頌子 東洋経済 記者

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とみた しょうこ / Shoko Tomita

銀行を経て2014年東洋経済新報社入社。電機・家電量販店業界の担当記者や『週刊東洋経済』編集部を経験した後、「東洋経済オンライン」編集部へ。

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