「Fランク大学」の存在意義はどこにあるのか 「社会の物差しからの自由は、日本の希望だ」

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僕たちの世代は、3分の1しか大学に行かなかったんですよ。ある程度頭がよくて、勉強が好きで、という人だけが、勝手に勉強して大学にいっていた。でも今はそうじゃない。手取り足取り、どうして、今、これを勉強しなくちゃいけないのか。それをしっかり教えられる大学じゃないと生き残れない。そういう頭の切り替えが大切です。

柴田武男(しばた たけお)/1952年東京生まれ。東京大学大学院経済学研究科第2種博士課程満期退学。財団法人日本証券経済研究所主任研究員を経て、現在聖学院大学政治経済学部教授。専門は金融市場論。埼玉奨学金問題ネットワーク代表

――学生に対して、具体的にどのような教育が重要と考えている?

若者は、学ぶ意義に気づくと、伸びます。それを引き出すために、どのようにして刺激を与えるかが重要。ただ、それぞれの学生のスイッチが、どこにあるのかを見極めることは難しい。どこを突っつくべきなのかは一見して分からないから、とにかく突っつくシステムを、我々は用意したい。

――職業に直結するというわけではなく、方法として少し抽象的な印象を受けますが。

文科省からも全く同じことを言われていますよ。教育プロジェクトに予算つけて欲しいなら、数字で可視化できる形にしてくれと。つまり、効果を計れる物差しをきちんと用意してから、提案して欲しいということですね。税金を投入する側からすれば、カネを出す価値を説明してみろって、大学に言いたくなる気持ちも、十分理解できる。ただ、教育に対して目に見える効果と言われても、なかなか難しい。

資格を取れば、社会を渡れるわけではない

――教育が職業に直結していないというのは、どこの大学も似たような状況でしょうか。

いや、その点については、開き直っている大学もありますよ。「大学には就職のために来てるんだ」と、完全に割り切っていて、それが学生に対するアピールになっている。例えば、千葉商科大学とかそうですよね。正直言って、これは説得力あるんですよ。その証拠に、うちよりはるかに学生を集めている。これも教育に対する1つの考え方だと思います。でも、資格さえあれば、本当に世の中を渡っていけるかという疑問もありますけどね。

――その疑問とは?

企業の人事の方とよく話すので、会社が就職活動をする学生に対して何を求めているかを聞く機会があります。それは何かというと、社会人基礎力。つまりはコミュニケーション能力ですよ。では、その具体的中身は何かというと、人の話を聞いて理解する力です。これは当たり前のスキルのように思えて、結構ハードルが高い。何を会社が要求していて、自分がどうしたらいいのか。自発的に自分で何をしたらいいのかを考えて、率先して行動するということでしょう。それを資格対策で教えられるんでしょうか。

――日本で仕事をすると、入社して配属が決まらないとどういう仕事をするかも分からないこともある。まずは人間性が重視される傾向はありますね。

そうです。日本の雇用が特殊なのはご存知かもしれませんが、職務を限定することなく雇用契約を結びますから、配置転換と転勤が自由にできます。日本の企業でうまくいく人材とは、会社の求めた様々な職種に、自由円滑に対応できる人ということになるでしょう。これが日本の組織の中では、一番大切なわけですよ。

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