見城徹は「時間に遅れる人」とは付き合わない 「3分で付き合うべきかどうかを決めてきた」

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――僕も部下として、見城さんが作家や経営者と打ち合わせをしたり、会食をしたりする場に同席することがありますが、見城さんの話に相手の方が吸い込まれ、心がさらわれる瞬間が面白いように分かります。

ただし、話を面白くするためにやってはいけないことが5つある。嘘をつくこと、誇張すること、人の秘密をばらすこと、人の悪口を言うこと、自慢すること。この5つをやれば必ず話は面白くなるに決まっています。僕は、人の悪口を言うこと、自慢すること、秘密を守ることの3つは守れないこともあるけど、それはまあしょうがない(笑)。とにかく、僕に会ったら面白かった、また会いたい、一緒に仕事がしたいと思って帰ってほしい。

――今回の文庫版で加筆された中に『人たらしになるな。「人さらいになれ」』というテーマがありました。人の心をさらうことの重要性は、どのビジネスにも通じることだと思います。その糸口はどうつかむのでしょうか。

まずはしっかりとした感想を言うことです。感想こそ、人間関係の最初の一歩。感想を言わなきゃ人間関係が始まらないのに、感想を言わない人がどれだけ多いことか。僕はもう65歳だし、結婚披露宴に呼ばれれば必ず主賓スピーチか乾杯の挨拶を依頼されます。本当は行きたくないんだよ。

だって土日のどっちかを必ず潰して、ご祝儀を包んで、それで2日ぐらい費やして何を言うか考えてスピーチしなきゃいけない。こんな三重苦はないでしょう。でも、人間関係はギブ&テイクだから、僕が結婚式でスピーチすることによって相手に喜んでもらえるんだったらと思って引き受けるんです。それでスピーチを終えて、自分の席に戻るでしょ。その時に「あの比喩は面白かったですね」とか、「あそこの言葉に感動しましたよ」なんて言ってくれれば、やって良かったと思う。

だけど何も言われなかったら、なんだこいつらと思いますよ。歓談の時間になったら、離れた席から僕のところに来て、「見城さん、今日のスピーチはこういうところが良かった」と言ってくれれば、その人のことが好きになるし、僕は常にそうやってきたよ。

感想を伝えることに心血を注いできた

――見城さんは常に電話でも手紙でも、誰かに対して感想を伝えている印象があります。

手紙も同じ。会食の翌日、速達でお礼の手紙が来ることがあるんだけど、ただ手紙を出せばいいってものではない。「今後ともご指導ご鞭撻の程宜しくお願いします」みたいな通り一遍のことしか書いてない手紙をもらっても嬉しくない。何がどう美味しかったのか、僕の服装がどう映ったのか、僕が話した内容の、どういう言葉にどういう風に興味を持ったのか、そういうことを書いてくれなきゃ面白くないし、この人とまた飯を食おうと思わないよね。

今は少なくなったけど、僕はずっと会食の翌日に速達で手紙を出してきたよ。これまで、直接でも、手紙でも、感想を伝えることにどれだけ心血を注いできたか。

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