太陽電池市場の低迷が招いた四日市の悲劇 国際競争力の強化に躍起

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工場への総投資額は約200億円。建設には約1年半を要した。この工場では特殊ガスのモノシランを生産。大陽日酸はこれを引き取って、エボニックとの合弁会社を通じて精製。日本国内だけでなくアジア市場に拡販する計画だった。

モノシランガスの主な用途は、結晶型と薄膜型の2タイプに分かれる太陽電池のうちシリコンをあまり使わない薄膜シリコン太陽電池の製造向け。だが、太陽電池は世界的な供給過剰が進み、多結晶シリコンの価格が大きく下落。もともと発電効率の劣る薄膜型の競争力が低下。エボニックモノシランジャパンの製造するモノシランガスは、ほとんど売れない状態となった。

大陽日酸はエボニックモノシランジャパンから10年間に渡ってモノシランガスを引き取る契約を結んでいたが、販売不振の状況が続けば10年での累積損失が300億円程度に上る可能性があったため、契約の解約金や合弁会社の解散などに伴う特別損失を約233億円計上して、この共同事業からの撤退を決めた。

この事業撤退は、エボニックを誘致した四日市市が予想だにしなかったことだ。「残念でならない」。四日市市工業振興課の担当者は話す。

エボニックは、もともと塩浜地区に三菱マテリアルとの合弁工場で、塗料やトナーなどの添加剤となるフュームドシリカをつくる日本アエロジル(80%出資)を40年以上運営し、四日市に根付いている。モノシランとフュームドシリカは原料や副産物を融通し合える関係にある。

 

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