世界の英雄は、みんな「痛風」に苦しめられた 予備軍は1000万人、打倒「王の病気」奮闘記

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繊維不況で多角化を目指していた帝人(現・帝人ファーマ)のフェブキソスタット(フェブリク®)は、1日1回の服用で尿酸生成の触媒酵素であるXORの働きを妨げ、副作用は少なく、腎機能が低下している患者にも使えるといったメリットを持つ。アメリカでは2009年、日本では2011年に発売され、実に40年ぶりの新しい痛風・高尿酸血症薬となった(詳しくは、拙著『新薬に挑んだ日本人科学者たち』参照)。

毎日の飲酒が痛風リスクを2倍に高める

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さらに、日本には伏兵がいた。300年の伝統を持つ越中富山の伝統商法、“薬売り”に端を発する富士薬品は、配置薬やドラッグストア中心の事業から「製薬会社」になることを目指し、ビギナーズラックとして合成に成功したのが、2013年に発売されたトピロキソスタット(トピロリック®、ウリアデック®)である。1日2回服用が必要で、XORを抑える効果はこれまでの薬と同等だが、尿たんぱくの改善効果があるとされる。

高尿酸血症を放置しておくと、痛風を起こしやすいだけでなく、腎機能が悪化して最終的に透析に陥るリスクが高まったり、尿路結石も起こりやすくなる。肥満でメタボを合併していれば、相乗作用でさらに悪化させかねない。

と言っても、すぐに薬に飛び付くのでなく、まずは生活習慣病改善から取りかかるのが基本だ。体内で合成されるプリン体のほうが多いとは言え、プリン体が多い動物性たんぱくやアルコールの摂取は程々に。とりわけアルコールは、プリン体量云々よりも、分解の過程で尿酸を生成しやすく、かつ排泄を少なくして、尿酸濃度を高める働きがある。毎日飲酒する習慣のある人は、痛風の危険度が2倍になるという報告もあるので、ご注意を。

塚崎 朝子 ジャーナリスト

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つかさき あさこ / Asako Tsukasaki

東京都世田谷区生まれ。読売新聞記者を経て、医学・医療、科学・技術分野を中心に執筆多数。国際基督教大学教養学部理学科卒業、筑波大学大学院経営・政策科学研究科修士課程修了、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科修士課程修了。専門は医療政策学、医療管理学。

著書に『慶應義塾大学病院の医師100人と学ぶ病気の予習帳』『新薬に挑んだ日本人科学者たち『世界を救った日本の薬 画期的新薬はいかにして生まれたのか?』(講談社)、『iPS細胞はいつ患者に届くのか』(岩波書店)ほか。

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