壮絶!「免疫の暴走」と戦い続けた創薬のいま "薬の王様"も関節リウマチ治療から生まれた

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かつては寿命をちぢめる病気であった関節リウマチ。治療と創薬の歴史を紐解きます(写真:maya2008 / PIXTA)

「四肢動かず、百節皆疼(ひひら)き、身体太(はなは)だ重きこと、猶(なほ)し鈞石(きんせき)を負ふがごとし」(万葉集巻、山上憶良作「沈痾自哀文」より)

手の指の第2関節や手の甲など、小さい関節から始まった痛みが、より大きな膝や肘といった関節へ広がり、強い腫れや痛み、こわばりに発展、やがて関節の骨が変形してしまう。血管、心臓、肺、皮膚、筋肉……ほかの臓器に障害が起こってくることもある。日本にはそんな「関節リウマチ」の患者が、70~80万人いると推計されている。

冒頭、10年来の病を患っていたという74歳の憶良が、関節リウマチの患者だったとする確証はないが、節々の関節に重りを背負うような痛みのさまが伝わってくる。

関節リウマチを引き起こす”悪い流れ”の正体は

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関節リウマチとの診断を受け、病んだ写真も残っているのは、印象派画家ルノワール(1841~1919)である。50歳前後で発病して78歳で亡くなるまで、変形した手で400点以上もの画を描いたという。そして、『フランダースの犬』でネロ少年が憧れた17世紀の画家、ルーベンスもまた、絵画に関節リウマチを患っていた痕跡を残している。

1800年、関節リウマチの症例を初めて医学的に報告したフランス人医学生は、「新しいタイプの痛風ではないか」と、その博士論文で疑問を呈している。

19世紀半ばになって、イギリス人医師・ギャロッドにより、その病気は「rheumatoid arthritis(関節リウマチ)」と名付けられた。古代ギリシャ時代には、脳から悪い液体が下方に流れ出て、体中を巡って病を生じると考えられており、医聖ヒポクラテスが、それを「rheuma(流れ)」と呼んだのに因む。余談ながら、ギャロッドは、痛風と尿酸の関係を見つけたことでも知られる。

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