世界の英雄は、みんな「痛風」に苦しめられた 予備軍は1000万人、打倒「王の病気」奮闘記

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ルイ14世もまた、「痛風」に悩まされたひとりでした(写真:Shin@K / PIXTA)

足の親指の付け根がみるみるうちに赤く腫れて熱を持ち、“風が吹いても痛い”ほどの強烈な痛みが走る「痛風」。実は、痛風治療の歴史こそ、医学の歴史と言えるかもしれない。

紀元前5世紀生まれのギリシャの名医、ヒポクラテスは、痛風について5つの格言を残している。曰く、「宦官(去勢された男性)は、痛風にならず、禿げない。閉経前の女性は痛風にならない。性交年齢に達する前の若者は痛風にならない。痛風の炎症は40日以内に治まる。痛風は春と秋に出やすい」……と。

さすがの慧眼である。紀元前2640年のエジプトのパピルスには、すでに痛風らしき記録があり、医聖ヒポクラテスは、より医学的に正確に記している。男性ホルモンとの関係も、すでにお見通しだった。

痛風が「王の病気」「病気の王様」と言われる由縁

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痛みは、英雄たちをもひるませたとされる。アレクサンダー大王、カール大帝、フビライ・ハン、ダヴィンチ、ミケランジェロ、ルター、ヘンリー7世、8世、ベーコン、ガリレオ、クロムウェル、ミルトン、ルイ14世、ニュートン、フランクリン、ゲーテ、ナポレオン、ダーウィン、マルクス、ヴィクトリア女王、チャーチル……。世界史は、痛風に苦しめられた人たちが動かした。もって、痛風は「王の病気(disease of kings)」と異名を取るが、「病気の王様(king of diseases)」とも言える。

痛風は、洋の東西を問わない。3世紀頃に編まれた中国の医学書の古典『金匱要略』には、「盛人脈濇小、短氣自汗出、歴節疼不可屈伸、此皆飲酒汗出、當風所致」とある。「肥満した人の関節が痛むのは、酒を飲んで発汗しているときに、風に当たったのが原因か」ぐらいの意味だろう。

現代日本における痛風の患者数は100万人、予備軍と言われる高尿酸血症は約1000万人に迫る。圧倒的に男性に多い病だが、「痛風になったアナタは英雄の仲間入りだ」と言っても、もはや慰めにはなるまい。

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