「ファン重視で急成長」の会社はココまでやる 「冷たい視線」をも受け入れる覚悟

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オートバイの市場には、燃費も性能もよいとされる日本製品がハーレーより低価格で売られている。だが、レース場などでハーレーがイベントを開催すると、日本中から黒い革ジャンを着たファンが集まり、中にはハーレーのロゴの入れ墨をするほど入れ込んでいるユーザーもいる。

ヤッホーブルーイングの面々は、ハーレーのイベントに参加し、なぜ熱烈なファンが生まれるのか分析した。結論は「顧客のライフスタイルにまで入り込んでいるから」。ハーレーのユーザーは、会社で「○○さんって、土日になるとハーレーに乗ってるらしいよ」「わかる、マッチョだもんね」などと話されもするだろう。また、ファン同士のコミュニティがあって、ハーレーの集まりがあると、顧客は貴重な休日を使い、同好の士との交流を楽しみに来る。

ハーレーは単なるオートバイでなく、ユーザーのライフスタイルや考え方を示すアイテムになっているのだ。井手氏らは、これをそのまま応用した。

なぜ井手社長は仮装したのか

ハーレーといえば、どこかマッチョなイメージがある。では、ヤッホーブルーイングは何を打ち出すのか。

「当社は、自社の顧客層を『知的な変わり者』と定義しています。コンビニやスーパーで気軽に買えるビールでなく、わざわざ通販で1缶あたり数十円高いビールを選んでくださる方たちです。きっと持ち物やライフスタイルにもこだわりがあって、周囲から見れば『ちょっと変わった人』『でもセンスがいい』といった存在なのだと思います」

ハーレーだけでなく、たとえばディズニーや、往年のアップル、ソニーなど「企業のフィロソフィーに対する共感」で人気化する商品がある。ディズニーやアップルの世界観に自分の世界観を投影するファンも多いだろう。それが同社の場合「知的な変わり者」だったのだ。

では「知的な変わり者」であるファンの共感を得るため、井手氏は何をしたか。

「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2008」の一幕。中央が、少し顔がこわばった三木谷氏、右が井手社長

「そのひとつが、仮装だったのです。楽天市場さんの『ショップ・オブ・ザ・イヤー』を受賞することになったとき、つまみ出されるかと思いながら、仮装して表彰台に立ちました。事前の打ち合わせもなく、仮装姿で三木谷社長のところに行き、一緒に写真を撮影しました。その写真、三木谷さんの顔がこわばっています(苦笑)」

だが、同社には、これでファンが増やせるのでは?と思えるだけの根拠があった。下記のストーリーを打ち出すのだ。

「『よなよなエール』は日本ではほとんど売られていないエールビール、華やかな香りを楽しみながら飲む、日本人があまり体験したことがないおいしさだ。社長は、この新たな楽しみを広めたい!と使命感を持って目立とうとしている」――。

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