3000円のビールは、なぜ一晩で完売したのか 持たざる者の「逆を突く」戦略とは?
日本では「クラフトビールは売れない」?
ヤッホーブルーイングは、社長がお堅い授賞式に仮装して登場したり、ビールとは思えない変わったネーミングをつけたりと、くだらないけれど面白い戦略で業績を伸ばしている。
しかし実はヤッホーブルーイングも、一時期、テレビCMを実施し、問屋に営業に行き、小売店に卸してもらい……という、常識的な売り方をしていた。同社成長の礎を築いた井手直行社長が、当時を振り返る。
「でも、何をやっても売れないのです。なけなしのおカネでテレビCMを実施しても、売り上げにはまったく影響がありませんでした。ポスターをつくっても、問屋さんに営業してもダメでしたね」
同社の創業は1997年のことだ。星野リゾートの星野佳路代表は、米国留学時代、香りが高い「エールビール」の味に胸打たれた経験を持っていた。そして1994年、法改正により小規模なビールメーカーが設立可能になった「地ビール解禁」があった。星野氏はこれを受け、同社を設立したのだった。当初は地ビールブームに乗って売り上げが伸びた。だが、しだいに「地ビールは味が個性的すぎて、品質の悪いものがある」と思われるようになると、パタッと売れなくなってしまった。
同社は、自社を地ビールメーカーと規定せず、職人がつくる「クラフトビール」メーカーだと考えていた。しかし世間はそんな違いに興味はない。ついに同社は、社員が大勢辞めるなど、崩壊の危機に陥った。
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