「悲観論後退」でも日本株の戻りが鈍い理由

なかなか定まらないドル円の方向とその水準

上値の重い日本株。ドル円の行方など不透明感が強いこともその一因だ(AP/アフロ)

2月中旬以降、金融市場では悲観心理が後退し、米国株式は2016年年初とほぼ同水準まで戻っている。年初から複数の悪材料が複合的に作用して市場心理を悪化させていたが、中でも、原油先物価格下落が資源関連企業の破綻や銀行システムに波及するなど、原油安に起因する「不安の連鎖」が広がったことが大きい。原油価格下落は世界経済減速の一つの側面に過ぎないが、それ自体が危機の触媒になるとみなされ、株式・債券・為替の値動きはいずれも、原油先物市場に規定されていた。

原油安を起因とする不安は一巡

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ただ、WTIが1バレル20ドル台まで下落したのは他の資源価格と比べても行き過ぎだったとみられる。需給悪化を示す統計や産油国の政治動向に関する報道が、投機の材料になり、自己実現的な価格下落が起きていた。原油を取り巻く需給構造が変わらず、大きな理由もなくWTIは再び35ドル台を超えて2015年末の水準に戻ったことで、原油安が引き起こす不安の連鎖はとりあえず和らいだ。

原油価格は一つの重要な経済変数だが、その値動きだけで金融市場全体が支配されていた状況が、悲観に傾き過ぎていた現れだった。そして、原油下落が招く企業破綻が銀行などの金融システムに及ぶという材料が浮上した局面は、「悲観の極み」に入ったシグナルだった。2015年9月、一部企業の破綻リスクが市場で危機再来と意識されたように、2016年2月、欧州銀行への根拠に乏しい懸念が強まった局面が「悲観の極み」であり、同じパターンが繰り返されたように見える。

悲観論を後退させた要因は、FRBが利上げ再開に慎重なスタンスに転じたこと、世界経済のアンカーとなっている米国経済が安定成長を維持(経済指標の改善)していること、中国当局の人民元安定化策の徹底などが挙げられる。実際には、原油価格の乱高下に市場心理が支配された悲観の極みが自然に修正されたことで、リスク資産がリバウンドした側面が大きかったようだ。

3月に入り、米国株に加えて、VIX(恐怖指数)、WTIなどの資源価格やクレジットスプレッドなども2016年年初の水準までとりあえず戻りつつある。ただ行き過ぎた悲観論が後退しただけで、世界経済全体を見渡すと米国以外は総じて冴えない。一段とリスク資産が上昇するには、米国以外の製造業の回復を示す材料が必要になるとみる。春先以降そうした状況は訪れると予想するが、その兆候がもう少しはっきりしない局面では、株高の後追いにはリスクを伴う。

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