大塚家具を去った創業者が描く第2章の勝算 二極化が進む家具業界、高級市場を攻める

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しかし、そういった大量生産プロダクツだけでは満足できないユーザーも間違いなく一定数存在するのもまた事実であり、そのターゲットへの訴求が日本の市場においては不足していたという見方もある。

日本の家具業界はニトリが圧倒的シェアを誇り、島忠や大塚家具、東京インテリア家具、ミサワ、カッシーナ・イクスシーなどが追う。

このうち輸入家具において高額商品の販売額でいえば大塚家具が圧倒的だった。さらに国産高級家具の取り扱いは独占していたともいえる。世界中からセレクトした高級家具を広大なスペースに展示し、競合店舗よりもかなり安価に販売するという革新的手法で事業を拡大してきたワケだ。会員制というシステムを取ったのも、この「割引販売」の軋轢を避けるためというのが最大の理由であったと聞く。

輸入高級家具ブランドとしてはカッシーナ・イクスシーやアルフレックスの名前が挙げられるが、彼らも単純に輸入商品を販売するというよりも自社企画による比較的廉価な商品の取り扱いが大きな比率を占める。つまり、大塚家具を除けば日本における高級輸入家具の取り扱いはそう大きいものではない。

新生大塚家具は中価格帯を拡充

勝久氏が去り、娘の大塚久美子社長が率いる新生大塚家具は取扱商品をかつての高級家具を中心とするものから、より中価格帯を拡充するという戦略を進めている。つまり高級家具レンジにおいては旧大塚家具が寡占していたマーケットに隙が生まれる。そこを新会社の匠大塚はターゲットとするようだ。ここでは世界的に高い評価を得たデザイナーの家具をはじめ、初めて目にするであろうモデルなどハイエンドプロダクツが並ぶ。

「B&B Italia」というイタリアの高級家具メーカーの日本における輸入権を獲得した野澤隆之氏

「車や時計などに関してはしっかりとその本質を伝えるメディアも多く存在し、文化として定着していますが、まだ家具についてはごく一部の限られた層のみが理解し、こだわっているに過ぎないというのが現状です」

そう語るのは今年1月、新たに「B&B Italia」というイタリアの高級家具メーカーの日本における輸入権を獲得し、東京・青山にショールームを構えた野澤隆之氏だ。野澤氏は「家具やそれを取り巻く家というものを含めた意識を高める時期に来ているのではないでしょうか」と投げかける。

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