大塚家具を去った創業者が描く第2章の勝算 二極化が進む家具業界、高級市場を攻める

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世界的に有名な高級家具メーカーは北米をはじめ各国に代理店を設け販売を行ってきたが、近年、その動きに変化が見られる。高級家具はよりインテリア全体としてのコーディネートが必須となり、顧客が単品ごとに購入してアレンジするには荷が重くなっているうえ、単一ブランドのみを顧客にアピールしても、なかなかその家具のよさを伝えきれない。

B to CからB to Bへ

そこで、高級家具メーカーは直営店や販売代理店で対面販売するB to Cの販売からB to Bで建築家やインテリアコーディネーターに商品をアピールし、ブランドの家屋全体への総合的な導入を促進するという方向へと変化し始めている。すなわち、顧客の嗜好を形にするインテリアコーディネーターたちが、各住居にマッチするように商品を選び注文を入れると、本社の倉庫から顧客まで一式直送し、コーディネーターがレイアウトするというシステムだ。

これは家具という「かさばる」商材には大きなメリットがある。これまではコンテナでまとめて仕入れるため、多くの在庫負担が必要であるし、それを保管する倉庫代もバカにならなかった。そんな訳で販売価格に対して大きなマージンを取らなければ販売店はやっていけなかった。この業界では仕切りが低く設定されており、もともと高価な家具が日本市場へ入るとさらに値を上げていたのだ。

匠大塚はこのような潮流に沿ったビジネスを考えているようだ。直接、商品を販売する「売り場」でなくコーディネートのパターンを顧客に見せ、イメージを膨らませてもらうために、東京日本橋タワー内に設けるスペースに呼び込む。

このスペースを訪れた顧客は匠大塚のアドバイザーや、御用達のインテリアコーディネーターとともに、セレクトされた多くの商品の中からお気に入りを探す。その顧客の好みにあったインテリアコーディネーターを匠大塚が紹介するサービスも行うという。

全世界的な高級家具のトレンドを鑑みるならば、この匠大塚の目指す路線は日本の家具業界で独自の地位を得られる可能性はある。現代は家具に限らず、たとえばクルマなどにしてもコモディティ化した実用本位の低価格大量販売プロダクツとプレミアムブランドの高価格限定販売に2極化されているからだ。

家具の世界では世界的規模で大量生産を行っているイケアや、日本では“ジェネリック家具”としてデザイン意匠権の切れた著名デザイナーによる家具のレプリカをはじめ、日本市場専門商品を企画し直営店舗で大量販売するニトリのような製造・販売を直結する業者が攻勢を強めている。かつて独自の手作り家具文化が強かったイタリアでも、あっという間にイケアが勢力を増し、今ではあの分厚いカタログが一家に一冊というほどイタリアの生活に入り込んでいる。

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