ホンダの燃料電池車、トヨタ車との違いは? 量産体制では遅れ、他車種への展開に可能性

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満を持して投入したFCVをアピールする八郷隆弘社長(撮影:梅谷秀司)

「ガソリン車に置き換わるモビリティとして有望。気候変動に関わる課題にも応えることができる」

ホンダの八郷隆弘社長は3月10日、新型燃料電池車(FCV)「クラリティ フューエル セル」の日本での発売に合わせた発表会で新型環境車への期待を語った。

水素と酸素を反応させて生み出した電気を動力とするFCV。走行時に二酸化炭素をまったく排出しないことから「究極のエコカー」とも呼ばれる。日本では2014年12月に「ミライ」を投入したトヨタが先行する。

1充填あたり走行距離は750キロ

ホンダのFCVは後発となったが、空間活用の秀逸さではミライを引き離す。今回の新型車は、電気を生み出す燃料電池スタックと動力を生み出すモーターの出力を上げつつ小型にしたことで、世界で初めてセダンのボンネット内に納めることができた。その分、水素タンク容量の拡大が可能になり、1充填あたりの走行距離をミライよりも100キロ長い、約750キロにすることができた。

キャビンにも余裕ができ、ミライが4人乗りのところをクラリティは5人乗りを実現した。「人のためのスペースは最大に、メカニズムは最小に」というホンダがクルマづくりで掲げる基本思想のM・M(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)を体現したといえる。開発責任者を務める本田技術研究所の清水潔・主任研究員は「マジカルなパッケージング」と胸を張る。

パワートレインをボンネットの中に格納可能にしたことは大きな意味を持つ。現在、ガソリン車などで展開する他の車種への搭載が可能になるからだ。実際、クラリティの車台はFCV専用とはしておらず、2018年には燃料電池の代わりに別の駆動システムを載せ、プラグインハイブリッド車(PHV)として北米に投入する計画だ。

FCVの開発開始は、ライバルであるトヨタの1992年に対し、ホンダは1980年代後半と、「FCVのリーディングカンパニーである」(八郷社長)との自負がある。だが、将来の量産に向けた体制作りではトヨタが圧倒的に先行する。

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