「君が代」は、なぜいつまでも議論になるのか 最大の問題は日本人自身の中にある
「君が代」と「日の丸」の違い
「君が代」は議論の絶えない「面倒くさい歌」である。では、具体的に「君が代」の何がそんなに問題になっているのだろうか。歴史をたどる前に、まずこの点を確認しておきたい。
戦後の日本で「君が代」問題といえば、ほとんど公立学校における扱いに終始するといっていい。すなわち、入学式や卒業式で、教職員や児童生徒は起立して「君が代」を歌うべきか否か、という問題である。
今でこそあまり聞かなくなったが、かつては3、4月にもなると定期的に各地の学校で教職員らが「君が代」斉唱に抵抗したという報道が繰り返された。1999(平成11)年に成立した「国旗国歌法」も、2011、2012(平成23、24)年に相次いで成立した大阪府市の「国旗国歌条例」も、そのきっかけになったのは公立学校の入学式や卒業式に他ならなかった。
法律の名前からもわかるように、「君が代」は「日の丸」と並べて語られることが多い。ただ、よくよく見てみると、両者の間には無視できない違いがあることがわかる。
文部省(当時)の調査によれば、1985(昭和60)年の卒業式では、すでに小学校の92.5%、中学校の91.2%、高校の81.6%で「日の丸」が掲揚されていたという。この数字は、1992(平成4)年には小学校で98.0%、中学校で97.6%、高校で93.4%と、更に伸びた(田中伸尚『日の丸・君が代の戦後史』)。「日の丸」掲揚は、「国旗国歌法」が成立する前から広く浸透していたのである。
これに対して、1985年の卒業式における「君が代」斉唱の実施率は、小学校で72.8%、中学校で68.0%、高校で53.3%にすぎなかった。自治体によっては、北海道、長野県、京都府、大阪府、高知県のように「君が代」斉唱だけ実施率が軒並み30%を下回るところさえあった。1992年になっても、この数字は小学校で85.6%、中学校で81.4%、高校で70.8%にとどまった。
1985年に朝日新聞が行った世論調査でも、同じような結果が出ている。すなわち、「『日の丸』が国旗としてふさわしい」と答えた人の割合は86%に上ったのに対し、「『君が代』が国歌としてふさわしい」と答えた人の割合は68%にすぎなかった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら