「寄せ書き日の丸」返還運動が拓く日米の未来 米国から日本の遺族へ、「旗への思い」共有

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太平洋戦争時、日本人は皆で出征を祝って兵士を送り出した。「日の丸寄せ書き」は戦地での兵士の「心のよりどころ」だった(提供:「OBON2015」)

「あの夏」から、間もなく70年になる。日本人だけで300万人以上の戦没者を出した太平洋戦争。戦争を経験した世代の多くがこの世を去り、自らの口でその悲劇を語れる人はますます少なくなる一方だ。戦争を知らない世代が、戦争の解釈を行い、戦争で得た教訓を次世代に引き継ぐ時代だ。何が正義で、何が正しいことなのか。とりわけアジアでは今でも責任追及に焦点が当たりがちで、議論は尽きない。

日本人兵の「日の丸寄せ書き」をアメリカから日本へ

しかし戦地へ赴き、生死の境をさまよった元兵士たちやその家族にとって、戦争には勝ちも負けもない。そこにあるのはただ悲しみだけだ。遺族たちが経験した心の痛みは、国境が違ってもみな同じだ。そこには、敵も味方もない。

そんな遺族たちの思いに寄り添いながら、静かに活動を続ける団体がある。「OBON2015」である。同団体は、現在主にアメリカ人が所有している、日本人兵が持っていた「寄せ書き日の丸」を、日本に返還してもらうよう働きかけを行っているボランティアだ。運営の中心を担っているのは、オレゴン州在住のレックス・ジーク&敬子ジーク夫妻である。

アメリカの退役軍人から「日の丸寄せ書き」を預かるセレモニーで、レクチャーをする「OBON2015」のジーク氏

実は、敬子さんは祖父を戦争で亡くしている。しかし戦後生まれの彼女は、当然祖父の存在を知らない。知っているのは1945年、石ころの入った小包が敬子さんの祖母のところに届いたということ。そしてその小包は祖父がビルマで戦死したことを告げるものであったことだけだ。遺体どころか、遺骨も、彼が身につけていた服の切れ端すら、家族の元には戻ってこなかった。

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