新聞社は「ソニーの失敗」を笑っていられない 「サイロ化」が成功した組織を蝕んでいく

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ジリアン・テットさんは東京支局長を務めていたこともあり、流ちょうな日本語も話す

――なるほど。本当はもうiPadを殺したほうがいいかもしれないですね。

iPadより、iPodでしょうね。iPodはもう古いですね。どんな製品も必ずなくなる時期が来ますが、自分で作ったものを自分で殺すことはなかなかできない。実は、メディアだってそうだと思います。

――伝統部門が抵抗するわけですね。

サイロは権力構造によって引き起こされることが多々ある。過去ばっかり振り返っている人は、どうしてもサイロに陥りやすいのです。

――要するに部門を固定することによる問題ですね。人を動かしたり、組織を変えたりすることで防げる問題が多そうです。

メディア企業はソニーのことを笑えない

私自身のキャリアを例に挙げると2004年から2009年にかけてクレジット市場など市場全体のことを取材している素晴らしいチームがありました。ちょうどそのときに金融危機が起きたため、私たちはチームとして非常に良い形で取材をできました。ただ、このチームが今も通じるわけではありません。世界は日々変化している。金融を今は市場、銀行、証券という具合に分けてきましたが、実はそんな分け方は古くなっている。こういうことを常に考えなければいけないのです。今となっては金融とテクノロジーについて、分けて書くことも間違っていると思います。

――フィンテックですね。いま聞いて思いましたが、フィナンシャル・タイムズはいい位置にいますよね。テクノロジーにも強いですし。

そうかもしれませんが、自己満足している場合ではないと思っています。もっと改善して、もっといろいろなことを学んでいかないとダメです。私はニューヨークに住んでいるので、市場がいかに急速に変わるのか、そして人々がどれだけ競争好きであるかを知っています。とてもではないですが、サイロにこもっているような余裕はないです。

――ソニーの失敗は、他人事ではないですね。

教訓を学ばないと、大変なことになると思います。


 (撮影:尾形文繁)

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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