帝人、「拡大成長」路線転換へ試される真価 今期は3度上方修正でも来期は一転不透明

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就任3年目を迎えて、真価が問われる鈴木社長

これらのプラス、マイナス要因を考え合わせると、今期のような、6割強の営業増益は、さすがに見込めそうもない。来期に減益を見込む証券アナリストもおり、見方が分かれるのも、それだけ予想の難しさを物語っている。

帝人は中期経営計画を基に、電子材料・化成品部門を中心に、構造改革を進めてきた。シンガポールの樹脂事業子会社を撤収し、フィルムの国内生産拠点を集約する。

こうしたリストラ策の一方で、「発展戦略」として、研究開発の新施設開設や営業改革、組織改革を促進。2020年ごろには、現在、「高機能繊維・複合材料」「電子材料・化成品」「ヘルスケア」「製品」「IT」の5分野に分かれている事業を、「ヘルスケア」と「複合・高機能材料」の2大分野へと、大胆に集約することを考えている。

拡大路線へと流れを変えられるか

その際のROEの目標値は10%。成否は、「素材とIT」「ヘルスケアと素材」というように、業際ごとの融合やクロスオーバーがうまく進むかどうかにかかる。もっとも今のところ、こうした融合の事例は、まだ売上高や利益に貢献するまでには至っていない。

鈴木純社長は2014年4月に就任、今年4月に就任3年目を迎える。社長就任会見では「5年先、10年先まで生きていくには、どうしたらいいか。ちゃんと利益を出せる形にするにはどこまで踏み込むか。今、マネジメントの中で、真剣に議論をしている」と語っていた。

それから2年たち、拡大路線へ流れを変えることができるか、来期は真価が問われる年になる。そろそろ成果を見せてもらいたいタイミングだ。

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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