炭素繊維3位の三菱ケミカル、「拡大策」の行方 BMW、エアバスの採用足掛かりに工場新設

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三菱ケミカルの炭素繊維はBMWi3に採用されている(撮影:鈴木紳平)

成長分野の炭素繊維で業界3位に甘んじていた三菱ケミカルホールディングスが巻き返しに出る。北米で2つ目となる炭素繊維工場の設立を検討。現状では既存工場の増強により、2016年までに北米で年4000トン体制を構築することは確定しているが、さらに新工場を設立して2020年に北米で年8000トン体制まで持っていく。国内工場の8000トンと加え、全体で1.6万トン体制を整える構えだ。

炭素繊維の重さは鉄の4分の1、強度は10倍

三菱ケミカルは炭素繊維分野で矢継ぎ早に手を打っている。今年2015年1月に発表されたのが、傘下の三菱レイヨンと三菱樹脂でそれぞれ展開してきた炭素繊維事業の統合で4月から新組織をスタートさせる予定だ。三菱レイヨンが手掛けるのがPAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維。航空機や自動車などに使われ、世界で10万トン市場に育っている。一方、三菱樹脂が強いのは石炭ピッチ系炭素繊維。ニッチの海洋、宇宙分野で使われ、世界シェア7割を握っている。

この両事業を三菱レイヨンにまとめて両技術を融合することで、自動車や航空機分野向けの拡大を狙う。炭素繊維は鉄と比べてコストは高いものの、重さは4分の1、強度は10倍という特長がある。

この炭素繊維を自動車に使おうとする動きが目立つのが欧州だ。2020年に向け欧州で燃費規制が強化される予定であり、三菱レイヨンも納入実績がある「BMWi3」など炭素繊維の活用が加速している。山本巌・三菱レイヨン常務は「自動車各社は軽量化の技術を取り込もうとしており、この分野でメインプレイヤーになりたい」と意気込む。

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