「ゲームを人生に役立てる人」は何が違うのか 日常世界に生かすべきは「勝ち負け」じゃない

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ただ、ここで注意していただきたいのは、「勝ち負け」というのはあくまでゲームセットの瞬間、今日のお話でいえば「電車から降りたあと」になって初めてわかることなんです。逆にいえば「電車に乗っている間」は「結果としての勝ち負け」のことを考えるべきではないんです。

ゲームが終わって「現実の世界」に戻った時には、「勝ち負け」という白黒がはっきりとついてしまいます。これが私は嫌でした。

ゲームが終わる瞬間までは、私たちは一方向に流れる「時間」というレールの上で、同じ電車に乗っている。でも、ゲームが終わって電車を降りてしまえば、そこはもう「現実の世界」です。「現実の世界」に降りた時には、勝ち負けという結果だけが残っています。「勝ち負け」というのは本来、ゲームの中でつけられるものです。でも実際には、ゲームでの結果は、「現実の世界」に持ち込まれます。

勝つことによって、何度も辛い思いをした

たとえば「オリンピックの金メダリスト」というのはゲームという特殊な「時間」の中で、最後まで勝ち残った人です。ですが、「金メダルをとった」という結果は現実の世界に持ち込まれ、周囲から尊敬を集めます。

もっと早くに負けてしまってオリンピックに出られなかった人、オリンピックに出たけれどもメダルを前に負けてしまった人、勝ってメダルを獲得した人。これらの人たちの差というのは、現実の世界ではっきりと、目に見える形に出てしまうんです。

私はよく、いつもゲーム中の時間のように、「相手と自分が対等の、同じ立場でいられたらいいのに」ということを思います。でも、ゲームが終わった後にはどうしても、勝者と敗者がくっきりと分かれてしまう。

現役時代の私は勝つ方がずっと多かったので、ゲームが終わると、ついさっきまで一緒にゲームを楽しんできた相手が「負けた人」になってしまい、自分との間に壁ができてしまうことがとても残念でした。

私はたくさん勝ってきた分、勝つことによって、何度も辛い思いを経験してきました。だからもう、ゲームなんてやりたくない、と思ったこともありました。

でも、この辛さってなんだったんだろう、と思うと、それは結局、ゲームそのものではなく、ゲームの時間が終わったあとの「勝ち負け」という結果に目を向けていたからだ、と気付きました。

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