生命保険への「入り過ぎ」は、防ぐことができる ライフサイクル表をつくれば計算できる

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ライフサイクル表を使い人生で起こる可能性のあるいろいろなリスクを考えていくと、リスクごとに生命保険に入ってしまう、ということも起こります。

子供のために「子供保険」、夫婦それぞれに「死亡保険」や「医療保険」、場合によってはさらに「がん保険」、最近では「就業不能保険」まで。やはり心配だから、とすべての保険に入れば、7,8本の保険に入ることになってしまいます。そこまで入る人は少ないと思いますが、現実に4,5本もの保険に入っている人は多く見られます。

もう一度、企業の火災保険のケースを見てみましょう。10億円の工場を10カ所操業している企業があるとします。その場合、10の工場それぞれに1本ずつ、全部で10本、総額100億円の保険を掛けていました。ところが工場は分散していますので、同時に複数が火災に見舞われる可能性はほとんどない、と考える方が合理的です。そこで、保険の自由化が始まった90年代後半以降、10の工場を1本の火災契約に集約してしまう包括契約方式が一般化してきました。その結果、多くの企業で保険料をそれまでの半額以下に減らすことができました。

同じように個人のライフサイクル上のさまざまなリスクにひとつずつ保険で備えることは合理的ではありません。個人の場合には、10の工場のようにリスクが完全に分散して独立しているわけではありません。しかし、リスク分散の考え方は基本的に同じです。リスクごとにそれぞれ保険に入るのではなく、できる限り保険は集約すべきです。人生で起こるすべてのリスクを1本の保険でカバーする、いわば「人生保険」のような保険があれば大変便利で合理的です。

自分で簡単に作れる「人生保険」とは?

「人生保険」とは、たとえば一定金額までならばどんな場合にでも支払ってくれる保険です。夫婦のいずれかが死亡しても、どちらが病気になっても、あるいは就業不能になっても支払われます。もちろん稼ぎ手である夫の死亡などの場合には、金額が不足します。そこで、そのようなリスクには不足分の保障額を上乗せして買い足すようにしておきます。

人にまつわるリスクはさまざまで、火災のように単一のリスクではありません。だから、保険会社も商品開発するのは技術的に容易ではありません。残念なことに、このような生命保険は現在のところ発売されていません。ただ、ここであきらめてしまうことはありません。

ポイントは貯金です。貯金を貯めさえすればよいのです。

たとえば、300万円の貯金には300万円分の「人生保険」の保障効果があります。何が起こっても、すぐに使えます。だから万能の保険です。しかも貯金額が増えていけば、その分、「人生保険」の保障額もどんどん大きくなっていきます。だから、あなたが今入っている何本もの生命保険の数を減らし、大きすぎる保障額を減らしていくことができます。

「生命保険に入り過ぎているのではないか」と常日頃から疑問を感じている人は、改めて、入っている保険の数と保障額をチェックしてみることをお勧めします。

橋爪 健人 保険を知り尽くした男

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はしづめたけと / Taketo Hashizume

1974年東北大学卒、1984年米国デューク大学修士。日本生命保険に入社後、ホールセール企画部門、米国留学、法人営業部門を経て米国日本生命副社長。帰国後、損保会社出向、ジャパン・アフィニティ(保険ブローカー会社)代表取締役を経て2004年独立。企業向け保険ビジネスのコンサルタントとして活動。著書に『日本人が保険で大損する仕組み』(日本経済新聞出版社)

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