マイナス金利が金融緩和効果を発揮する日 適切範囲で実施なら負の面は大きくならない

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マイナス金利導入で先行したユーロ圏経済への注目が高まっている。欧州委員会は2月4日、冬季の経済予測を発表、成長率は2015年の1.6%から2016年は1.7%になるとした(写真:ロイター/アフロ)

1月29日に日本銀行がマイナス金利政策を導入してから、約2週間が経過した。おカネを貸す側がペナルティ(マイナス利息)を支払う通常とは真逆の「マイナス金利」、というフレーズには大きなインパクトがあるため、導入した日本銀行の政策は「劇薬」などとメディアで伝えられた。

時間も経過したため、冷静な評価や分析も目立つようになっている。ただ、今回の措置では、定期預金の金利がゼロに近づき、MMF募集停止など身近に影響が及んでいるためか、なおメディアでは「ルビコン川を渡った」「禁じ手発動」「預金者への罰」などセンセーショナルに報じられるのが散見される。

先行したユーロ圏での金融機関の行動は

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もっとも、すでに各所で説明されているが、今回日本銀行が採用したマイナス金利政策は、ユーロ圏、スイス、スウェーデンなどの先行例が踏襲されている。日本との比較で参考になるのは経済規模が大きいユーロ圏になるが、同地域においてマイナス金利の副作用や弊害を心配する声を、筆者はあまり耳にしたことがない。後述するようにプラスに評価される側面が多い。

というのも、基本的な事実として、マイナス金利といっても個人などの預金金利がマイナス利息になるのは極めてまれで、いくら低下してもほとんどの預金金利そして貸出金利はプラスのままである。マイナス金利は、銀行が中央銀行に預ける預金に適用され、それが波及して金融機関同士の取引金利や国債金利などがマイナスで取引される。そして、マイナス金利となる預金やマイナス金利の国債を保有する、銀行を含めた金融業界の収益や行動に影響が及ぶ。

ユーロ圏を例に挙げよう。ECB(欧州中央銀行)は2014年6月にマイナス金利を導入、2015年に量的金融緩和(国債などの資産購入拡大)を始め、金融緩和強化を進めてきた。日本では周知のように2013年から量的金融緩和(大規模資産購入)を先に行い、今回マイナス金利を導入しており順番が逆である。ただユーロ圏と日本では2%インフレ目標実現にほど遠く、デフレに陥るリスクがいまだに無視できないので、金融緩和のツール強化で足並みをそろえたといえる。

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