フィギュア王国になれない日本のアキレス腱

カップル競技を取り巻く環境はとても厳しい

2015年12月、グランプリファイナルのアイスダンスで優勝したカナダのケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組。カップル競技人口が圧倒的に少ない日本、いつの日かその状況を脱することはできるだろうか(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

カップル競技はなぜ日本で広まらないのか?

その疑問を探る前に、ある日本人の元アイスダンス選手の言葉から始めたい。「陸上では片目をつぶれるけど、氷上ではつぶれないんですよね」と、冗談交じりに確信めいたことを言ってくれた。

「普通に付き合っているときは、どうしても目につく部分があっても許せるけど、競技では許せないことがあるんですよ。うまく滑れない相棒をずっと許していたら、絶対に勝てないですから」

端的でわかりやすい証言。フィギュアスケートを見ていると、中堅層だけでなく、国際的に評価が高いカップルでも結構別れたりくっついたりしている。氷上を越えて恋愛関係であろうとなかろうと、「片目をつぶれない」競技性――。本質を突いた言葉をもらった気がした。

勝つために解散を選ぶときもある

社会学者の大澤真幸は著書「恋愛の不可能性について」で、恋愛において相手を単純に好きと言うことは不可能であることを証明している。それが冒頭の発言ともリンクしていて、なんとも面白い。以下、簡単に説明を。

誰かを好きと言うことは不可避に、他の誰かではない理由に支えられている。「趣味が合うから」「背が高いから」など理由を挙げれば挙げるほど、同じような条件がそろった人ならば、その「誰か」ではなくても良いのかという問いが待っている。他人と比較するという意味でとても相対的だが、実際には、恋愛に求めるのは絶対性だろう。

「私は君が君だから好き」と純粋に証明できればいいが、人は考える。その理由を挙げるならば、唯一性は存在しなくなる。それを「不可能性」と言い表す。ただ、人はその不可能性を抱えながらも恋愛する。それが冒頭に挙げた「陸上」の論理で、なにがしかに「片目をつぶって」絶対性を追い求めていく。

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