「黒田バズーカ」第3弾を生んだ崖っぷち事情 計り知れないマイナス金利導入のインパクト
またも市場の意表を突いた、黒田バズーカ第3弾「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入だった。1月29日、日銀は「金利」「量」「質」の新々3本の矢によってアベノミクスへの最大の援護射撃をした。
しかしこの日、アベノミクス最大の危機を迎えていたことを理解すると、出るべくして出た政策だったことがわかる。それは前日の28日、政権の中核を担い、安倍首相の信頼の最も厚かった甘利経済再生相の退任理由が「政治とカネ」と言う、海外ファンドが最も嫌う理由だったからだ。
アベノミクス移動平均を割り込むリスクを回避
もし黒田日銀総裁がゼロ回答をしたら、当然株価は再び1万6000円を目指しただろう。安倍首相が変身した姿で再登場してから3年、アベノミクス移動平均と言われる36カ月(3年)移動平均は1万6300円台にある。
欧米の多くのファンドは現在、原油安や中国リスクで、ロングポジションを調整している。アベノミクスの一角が崩れたとなると、再び売り攻勢をかけ長期にアベノミクス移動平均を割り込むリスクが多分にあった。そうなると、アベノミクスを信じて来た多くの投資家の失望(損失)を買い、夏の参議院選挙はとても戦えなくなる。
こんな崖っぷちの事情が、賛成5反対4と言う決定会合内部の厳しい環境を押し切って出したマイナス金利導入だったと筆者は推測する。このマイナス金利導入で、短期的には甘利退陣と言う政治不信材料を吹き飛ばしてしまった。また、長期的には、金利政策の幅を大きく広げ、今後いくらでも「追加緩和」が出来る異次元緩和のスケールアップとなった。俗的に言えば、参院選前に何でも出来る状態を作り上げたことになる。
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