キヤノンの一眼レフで不良事故が多発する理由、製造請負依存の死角(上)

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クリーンルーム内でホコリが舞い上がる?

キヤノンの主力カメラ工場は九州・大分県に立地している。大分空港近く、国東市にあるのが、1942年から74年まで社長、74年から84年まで会長を務めた御手洗毅氏の時代、82年に建設された大分キヤノン安岐事業所。もう一つ、大分市内から車で20~30分、大野川を越え小高い丘陵地帯を登ったところに立地しているのが、大分事業所だ。こちらは、95年から06年まで社長を務め、現在は会長の御手洗冨士夫氏が社長を務めていた時期に建設が決まった国内カメラ工場だ。

この2工場がキヤノンのカメラの7割弱を製造している。コンパクトデジカメの低価格品を中国やマレーシアの工場で製造しているものの、すべての一眼レフを大分で製造している。

大分キヤノンを支えてきたのが、常時数千人規模で製造現場に従事する請負労働者(請負会社社員)だ。主に製造管理や工具のメンテナンスなど組み立て以外の業務を大分キヤノンの正社員、期間社員が担当する一方、日研総業、テクノスマイルなどの社員が、請負労働者として、現場での組み立て作業を行ってきた。

「他社の工場からキヤノンに来て感じたのはクリーンルームの汚さ。驚くほど、とは言わないが、前の工場と比べるとギャップを感じる」

今年初めまで大分事業所でCMOS(画像センサー)モジュールの組み付け工程で働いていた30代男性は、現場の様子をこう振り返る。

光を調整するクリスタルプレート、画像モアレ(干渉縞)等の発生を防止するローパスフィルターなどを圧着するCMOSモジュールの組み付け工程は、微細なチリの混入も許されないため、クリーンルームで作業が行われている。

ところが、大分キヤノンの2つの事業所では作業者はマスクをしていない。それはクリーンルーム内でも同じだという。キヤノン広報部は「マスクをしなくても品質にかかわりはないという判断をしている」と説明する一方、現場で働く30代請負会社社員からは「クリーンルームはホコリが多い。圧着時に大気中のホコリがモジュールに入り込んで不良になることは常にある」と食い違う意見が聞こえてくる。大分事業所で働いていた20代女性に尋ねると、「蛍光灯の光で、大気中にホコリが舞っているのが目に見えるときがある」と言う。

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