「日本は努力次第で上に行ける平等社会だ」 学生支援機構トップが奨学金制度批判に苦言

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ネガティブな報道が多い印象の奨学金制度。日々の報道や批判的な世論について、日本学生支援機構のトップはどのように考えているのか?(写真 : KAORU / PIXTA)
「まるで貸金業者」「若者を食い物にしている」とまで批判されるようになった奨学金制度。貸与という名の借金を学生自身が負う仕組みになっており、「奨学金」という名前がそもそもふさわしくないのではないかという疑問の声も出ている。
日本の奨学金制度の大半の運営を行うのは、独立行政法人である日本学生支援機構(旧日本育英会)。歴代の理事長には国立大学の学長経験者が名を連ねていたが、2011年7月からは日本銀行出身の遠藤勝裕氏が就任している。これまでの大学関係者とは異なり、「金融のプロ」だ。
日々の報道や批判的な世論について、どのように考えているのか。遠藤理事長に話を聞いた。今回は、その前編をお届けする。

 

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――奨学金問題は貸与を受ける人が多いこともあって、世間の関心も高いです。取材も多いのでは?

5年近く理事長をやっていますので、いろいろな取材を受けましたよ。雑誌やら新聞やら……。正確に私の意図をきちんと伝えてくれるところもあれば、部分的にフォーカスして伝えられたりね。ただ、私もある程度は心得ていますよ。公的立場にある者は、部分的に切り取られることもある、ということを前提として、取材に応じていかなければならないので。

奨学金を返還できない人は、全体の2%強

――取材に当たって、「奨学金を返せない人の割合は、全体のどれくらいだと思うか」と何人かの人に質問してみました。その結果、「2~3割くらい」と答える方が多かったです。

要返還者が400万人いるんですけど、そのうち返還率は97%以上です。つまり延滞債権者の比率は2~3%。メガバンクもだいたい同じくらいなんですよ。無審査で貸与しているのに、この数字は本当にすごいことだと思います。日本人はやはり真面目な国民性なんだなと。

延滞比率は一貫して減少傾向だ

ただ、もちろん、いろいろな事情を抱えた人がいることは承知しています。ですから、そういう人に対してわれわれは、さまざまなセーフティネットを設けて、「こういうものがありますから、皆さん、遠慮しないで申し入れてください」とお伝えしています。フォローすることができる人には、あらゆる救いの手を差し伸べている。しかし、それは一切記事になりません。なぜかと言うと、あまりにも当たり前だから。

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