フェラーリの中古価格があまり落ちないワケ 「業界の常識」が通用しない相場がつくられる

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1999年発表の「360モデナ」。そのスタイリングの魅力は今も色褪せない

再び会社を興したAさんが、今「458スペチアーレ」に乗ることができるのも、あの360モデナが教えてくれたフェラーリを持つという喜びのおかげだとA さんは思っている。360モデナはどうしたかって? もちろんAさんはそれを買い戻してガレージにピカピカにして飾っている――。

これは拙著『フェラーリ・ランボルギーニ・マセラティ 伝説を生み出すブランディング』(KADOKAWA)の中で描いた一つのエピソードを少しアレンジしてまとめたフィクションだが、現実に起こりえた話でもある。このAさんのような360モデナのオーナーの所有していたクルマが普通のセダンやクーペだったら、新車購入から1年後に売り急いだ下取り金額は、購入価格の半分以下が関の山だっただろう。

「昨年は売り上げを倍増し、創立以来最高の利益を上げました」。ある独立系のスーパーカー中古車ディーラーのオーナーは語る。

新型の登場で逆に旧型の人気に火が点く

「フェラーリのニューモデルの『488GTB』(ベース価格約3100万円)が発表されるという噂が出ると、その買い替えの為に、前モデルで2009年に発表された『458イタリア』(ベース価格約2900万円)や2004年発表の『F430』(ベース価格約2100万円)が売りに出されました。新型が出て値落ちしないうちに手放そうという訳です。ところが今度の488GTBが発表されると、その大きく変化がなかったスタイリングや新しいターボエンジンが搭載されたことから458イタリアへ再び脚光を浴び、特に上半期は中古車市場において高値をキープし、引く手あまたとなったのです」

488GTBはマーケットのニーズに適合するために進化し、フェラーリの熱狂的なファンで超富裕層のオーナーはこの最新モデルを競って手に入れるのだが、一部のマニアの間で、前モデルの「458イタリア熱」を生み出した。そのため、中古車市場において458イタリアは高値安定で大きな動きを見せたのだ。

6年落ちの初期モデルでも新車価格(ベース本体価格だが)の200万円落ちくらいの値で販売されるし、後期モデルではほとんど同額という強気さ、である。実際、フェラーリの中古車市場は通常の大量生産車のものとは大きく異なっている。一部のオーナーは株価の変動をリサーチするかのようにフェラーリの新車情報や中古市場の動きを見て売り時、買い時を判断する。まさにフェラーリは金融商品のようだ。

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