日本人は税の取られ方にあまりにも無頓着だ 正しい知識を押さえて賢く納めよう

拡大
縮小

「基礎控除(非課税枠)の縮小」と「税率の一部アップ」によって、課税対象が拡大し、支払う税金額も増加した。基礎控除額は2014年12月までは「5000万円+(1000万円×法定相続人数)」だったが、2015年からは「3000万円+(600万円×法定相続人数)」に変更された。

たとえば、父親が亡くなって、相続人がその妻と子1人の場合、非課税枠は7000万円から4200万円に4割も縮小した。遺産総額が5000万円の現金なら、昨年までは非課税だったが、改正後は4000万円を超えると課税対象になった。

これまで東京でもよほどの高級住宅地か商業地でないと相続税が発生しなかったのに、23区内にある数十坪の普通の住宅でも、資産内容や相続人の数によっては、相続税が発生することがある。以前と比べると1.5倍前後になったという推計がある。

マイナンバーの始動で課税逃れはもう許されない

さらに納税者にとって税への関心が高まる出来事があった。今年1月から始まったマイナンバー(社会保障・税番号)制度だ。2015年10月下旬から、全国の世帯に「通知カード」が配達され、今年からの源泉徴収票への記載や雇用保険の届け出などに使われる。2017年以降は、行政機関同士の相互ネットワークがつながり、確定申告や健康保険などの手続きで使われる。

銀行預金口座との結びつきがポイントだ(写真:KY/PIXTA)

何より税との絡みで焦点となっているのが、銀行預金口座とのひも付け(結び付け)だ。マイナンバーによって、個人個人の預金口座の出入金と資産状況を把握できれば、税務署は課税逃れを正確に見つけられる。法律では、銀行が預金者からマイナンバーの取得を始めるのは2018年から。これは任意で、預金者は銀行に知らせる義務はない。

ただし、任意利用の後には見直し規定があって、政府部内では2021年以降の義務化を検討しているとされる。そうなれば納税者の資産は、いわば丸裸になる。そうなれば、「ちょっとずるいことをして課税逃れをする」のは難しいのだ。

税は正しく納めなければならない。どこの国でも脱税は重い犯罪だ。その一方で、納税を正しく知って、法律の範囲内で税金を安く済ませることは、納税者として当然の行動だ。政府も政策誘導のために、さまざまな特例や特典を設けて、納税額を小さくする仕組みを用意することがある。そうした節税のノウハウや知識を知っているのと、知らないとでは税金の値段が違ってくる。

長谷川 隆 東洋経済 記者

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はせがわ たかし / Takashi Hasegawa

『週刊東洋経済』編集長補佐

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